2011年 イラン 114分
監督:レザ・ミルキャリミ
イランの結婚式。 ★★☆
末娘パサントの結婚が決まり、その婚約式に姉夫婦やいとこたちが集まっている。
伯父やら叔母やらも次々にやって来て、女たちはみな祝いの宴の準備に忙しい。
人々の衣装や、婚約式に準備するものはもちろん我が国とはまったく違う。
それでも、こんなに親戚一同が集まって冠婚葬祭の準備をするなんて、一昔前の日本のような雰囲気である。
どこか懐かしい人々の集まり具合なのだ。
そういえば、結婚式の様子を描いたインド映画に「モンスーン・ウェディング」というのがあった。
インドらしい超豪華な結婚式が描かれていて、あれも興味深いものだった。
親戚の手前、花嫁のお父さんはものすごく無理をして見栄を張ったりしていた。どこの国も一緒?
今作の原題は単純に「角砂糖」。
イランのこういった式では角砂糖が必要らしい。
そしてその角砂糖は、日本のようにきれいに四角くはなっておらず、大きな塊を金槌で割って一個一個を作っていた。
花嫁の亡くなった父親がわりの伯父がその役割をしていた。
映画は、そんな賑やかで雑然としたお祝い事に集まった人たちの群像劇でもある。
料理をしながら止まらないお喋りのおばさん達。
そんな女性陣の傍らで仕事や政治の話をグダグダとしている男連中。
中庭では子供達が遊び回っている。
と思えば、思春期の男の子はひとりパソコンをいじっている。
どこの国でも本質はかわらないなあ。
ところが、ところがである。ひとりで黙々と角砂糖を割って作っていた伯父が、つまみ食いをした角砂糖を喉に詰まらせてしまう。
誰もそのことに気づかない。
翌朝起きてきたパサントがすでに死亡している伯父を発見する。ああっ!
今日は祝いの日のはずだったのに。それが一転して葬儀の日に・・・。
華やかに飾り付けていた電飾を外し、黒い大きな布で婚礼の飾りものを隠すパサント。
そんな日に兵役についていた従兄のガゼムが休暇で帰省してくる。
彼も伯父の死に驚く。そしてパサントが婚約することを知る。
実は、どうもガゼムとパサントは互いに好意を持っていたようなのだ。
しかし、しきたりなのか、しがらみなのか、パサントは隣家に嫁ぐことになってしまっていたのだ。
皆が疲れ切って雑魚寝しているあいだに、ガゼムは誰にも何も言わずにまた兵役に帰っていく。
パサントの婚約はまだ成立していない。はたして、どうなる?
イランの庶民の冠婚葬祭を通して、そこから見えるお国柄の違い、そして万国共通の人間の様が、自然体で描かれていた。
異国情緒をただよわせるイランの家や庭、人々の衣装が美しい。