あきりんの映画生活

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「シリアの花嫁」 (2004年)

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2004年 イスラエル
監督:エラン・リクルス

政治紛争に翻弄される村人たち。 ★★★

 

イランの冠婚葬祭の映画の次に、今度はシリア、イスラエル問題のなかでの婚礼の映画。
こちらは複雑な政治背景があり、ことは単純には進まない。

 

ゴラン高原に住むモナは、シリアに住む親戚の男性と結婚することになる。
周りから祝福されながらの結婚式当日を迎えているところから映画が始まる。
しかし、当のモナを始めとして、家族は誰もが無条件に歓びを表してはいないようなのだ。
美しく着飾った白衣の花嫁なのに、どうして?

 

この映画はゴラン高原の政治的情勢と、そこに住む人たちが置かれている立場をある程度知っていないと、その緊迫感が理解できないことになる。
国際的にはシリア領だと考えられていたゴラン高原を1967年からイスラエルは占領している。
イスラエルもシリアも主権を主張するために、そこに住む人たちは無国籍状態となっていたのだ。
モナがゴラン高原からシリアに入国すれば、もう二度とゴラン高原の村へ帰ることはできないのである。

 

中東情勢は複雑で、遠く離れた日本人にはなかなか充分には理解できないところがある。
当事国ばかりではなく、それぞれに肩入れをする周囲の国々の思惑も絡んでくるから、さらにややこしくなる。
そしてその紛争情勢の根本には宗教問題がある。
これも、いわば多神教で宗教問題には寛容的な日本人にはその深刻さが理解しにくい。
単純な私などは、人を救うはずの神様がどうして殺し合いの原因になるのだ?と訝しく思ってしまうのだが・・・。

 

モナの家族も、それぞれにいろいろな問題を抱えている。
父親は親シリア派の活動家で、イスラエル警察からは目をつけられている。”境界”には近づくなと警告も受けている。
不安がいっぱいのモナを終始励ましつづける母親は、夫との仲が冷え切っている。
長男は宗派を越えてドイツで結婚生活を送っていて、妹の結婚式のために帰国したのだが宗派の長老から非難を浴び続けている。
お調子者の次男は、”境界”でイスラエルとシリアの橋渡しをしている日赤の女性と男女のもつれを起こしている。
みんなそれぞれにモナを祝福しようとしているのだが、それぞれに暗い感情を抱いている。

 

”境界”というのはイスラエルとシリアの国境に設けられた緩衝部分。
両国はそれぞれに検問所を作って兵士が警備している。
モナはこの”境界”を越えてゴラン高原からシリアに嫁がなくてはならないのだ。

 

”境界”にある両国の官僚的な対応の係官が話をまたややこしくする。
イスラエル側は、シリアに行こうとするモナのパスポートに出国のスタンプを押す。
シリア側は、ゴラン高原はシリアの国の一部だから(イスラエルが不法占拠しているだけだから)こんなイスラエルの出国スタンプのあるパスポートを認めるわけにはいかない。
どちらも譲らない。
荒涼とした石と砂だけの”境界”で花嫁衣装のモナはいつまでも待たされる。

 

融通をつけろよ、花嫁なんだぞ、と言いたくなるのだが、これが世界の現実なのだろう。
一体どうなるのかと思いながら観ていたのだが、最後、モナがとった行動とは・・・。

 

う~ん、こういう過酷な情勢の地域に住む人々が確かにいるのだなあ、と思わされる。
ちなみに監督のエラン・リクリスはイスラエル人である。
モントリオール世界映画祭ではグランプリを受賞しています。