あきりんの映画生活

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「夏への扉」 (2021年) 30年前に死んだ彼女を助けなくては・・・

2021年 日本 118分
監督:三木孝浩
出演:山崎賢人、 清原果耶、 藤木直人

タイムマシンもの。 ★★☆

 

原作はSF小説の金字塔と言われるR.A.ハインラインの同名小説。
昔読んでいて大まかな設定は覚えていた。
さあ、あの名作をどのように映画化したのだろうか?

 

舞台はもちろん日本に変更している。
幼い頃に両親を亡くした宗一郎(山﨑賢人)は、亡き父の親友・松下に引き取られ、ロボット開発の天才科学者として成長していく。
しかし、その松下夫妻も事故死してしまった。
それでも宗一郎は、愛猫のピート、そして松下の娘で高校生の璃子(清原果耶)と落ち着いた研究生活をおくっていた。

 

ところが、宗一郎の研究成果は信頼していた共同経営者と婚約者に奪われてしまう。
おまけにその騒動に巻き込まれて璃子も事故死してしまう。
すべてに絶望した宗一郎は、人体を冷凍保存するコールドスリープで30年間の眠りに入ってしまう。
30年後に目ざめた宗一郎は、果たして何を見るのか。そして自分と璃子を破滅させた悪役2人に復讐することはできるのか・・・。

 

というところが大ざっぱなあらすじ。
あれ? 冷凍睡眠で30年後に? これでは単にタイムスリップしただけで、タイムマシンものじゃないじゃん・・・。
いやいや、名作と言われるのにはそれだけの仕掛けがあるのだよ。

 

物語の始めの舞台は1995年の東京。
ブラウン管テレビやカセット・ウォークマンの時代なのだが、ロボット工学などのある分野では現実とは微妙に違うところが面白い。
そして宗一郎が目ざめた2025年では、AIを搭載したヒューマノイドが社会のあちらこちらで活躍している。自動運転の無人タクシーも走っているぞ。
3年後にはこんな風になる?

 

この映画の眼目は、30年後に目ざめた主人公が、今度はタイムマシンで30年前に戻るというところ。
そしてこの映画での世界は、パラレルワールドではなくて、過去を修正すれば未来も変わるということになっている。
要するに、過去に戻って璃子の死を防げば、璃子が生きている世界と死んだ世界があるのではなくて、璃子が生きている世界に修正されるというもの。
なるほど。

 

藤木直人が、宗一郎の世話をするヒューマノイドを演じていた。
その意識的にされる不自然な動作、話し方がそれらしく見せていた。
感情を持たない存在なのだが、映画の終わり近くで一度だけ、にやっと笑った顔を見せる。好かったよ。

 

いくつかの不満もある。
過去を変えることによって今(過去から30年後、ね)が変わっているわけだ。
だから、今の住人たちは宗一郎が過去に戻って過去を変えてくれなければ今の自分はいないことになるのだ。
宗一郎に再会して感激する(今の)会社社長やら、タイムマシンの発明科学者、すべてを仕切ってくれた弁護士など、うまく伏線を回収していた。

 

しかし、それらが後出しじゃんけん風の感じがなきにしもあらず、ではあった。
もっと前半に伏線を散らばらせておけなかったものだろうか。

 

そして肩すかしだったのは、宗一郎を裏切った悪役の二人、どちらも勝手に自滅してしまっているではないか、というところ。
まったく復讐劇はおこなわれていないのだ。
まあ、原作でも主人公は明るい善人で、復讐などというどろどろしたものとは無縁の人物像だったのだが・・・。

 

退屈することはなかった。しかし、しかし、である。
この映画制作の情報を聞いたときから、今さらこの名作を映画化するの?という不安はあったのだ。

これが、クリストファー・ノーラン監督が映画化した、ということであればどうだったろう、とつい思ってしまうのでした。