2022年 日本 128分
監督:白石和彌
出演:阿部サダヲ、 岡田健史、 岩田剛典、 中山美穂
サイコ・サスペンス。 ★★☆
原作は櫛木理宇の同名小説。とても病んでいるという評判の本だった(未読)。
大学生の雅也(岡田健史)に、刑務所にいる続殺人鬼の榛村(阿部サダヲ)から手紙が届く。
面会に来て欲しいと依頼してきた榛村は、雅也にとっては幼い頃に通っていたやさしいパン屋さんだったのだ。
すでに死刑判決をうけている榛村なのだが、1件だけは犯人は自分ではない、その事件を調べて欲しいと雅也に依頼する。
榛村さんはどうして自分に頼んできたのだろう?
主役が阿部サダヲと聞いて、へぇ~と思ったのだが、白石監督は5年前の「彼女がその名を知らない鳥たち」でも起用していたのだった。
何か、監督が表現したいものに合う俳優なのだろう。
榛村の連続殺人を再現する場面は、かなりグロい。拉致した人を徹底的に痛めつけてそれから惨殺する。
殺した少女の爪を剥いでコレクションしていたりもする。
正直なところ、これはかなわんなあ、観ないでおきたいなあ、と思ったほど。
この映画、PG12だけれどもPG15でもいいのでは?
そんな残酷非道な榛村なのだが、表の顔は社交的でまったくの善人にみえるのだ。
そして巧みな話術で人の心を捕らえてしまう。
いわゆるサイコパスなのだが、ある種のカリスマ性を備えているのだ。
先日観た「蛇のひと」の主人公も話術で人を繰っていた。
しかし今作の榛村はその意図が根本から違っている。
狂人といっていい人物である。相手を洗脳して自分の意のままに操ろうとする。怖ろしい。
映画は、榛村によって次第に深みに誘われていく雅也を追っていく。
実は雅也の母も榛村とは知り合いだった。そしてその頃に母は妊娠して雅也を生んだのだった。
えっ、それじゃ自分の父親は・・・?
(以下、ネタバレ)
榛村の狂気は確かに”死刑に至る病”としか言いようがない。
そしてこの映画のラストもまた怖ろしい。
雅也が安らぎを求めた恋人・灯里が雅也に向かってぽつんと一言つぶやく、「爪…はがしたくなる?」
えっ、!
なんと、彼女もまた榛村に洗脳されてしまっていたのだ。
彼に刑務所に呼ばれて面会をしていたのは雅也だけではなかったのだ。
榛村とはそんな人物だったのだ・・・。