あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。1800本余りの映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。

「湖のほとりで」 (2007年)

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2007年 イタリア 95分
監督:アンドレア・モライヨーリ
出演:トニ・セルビッロ

詩的なサスペンス映画。 ★★★☆

舞台は北イタリアの小さな村。
ある日、村はずれに住む知恵遅れの男が湖のほとりで村の美しい少女、アンナの他殺体を見つける。
みんなに好かれていたアンナは、なぜか抵抗したあともなく殺されていた。
誰がこんなことを?
警部と2人の部下が捜査をはじめ、村人たちに話を聞いて回る。

画面はとてもきれいに村の風物を映し出す。
そしてバックに流れる音楽もきれいな旋律で、サスペンスものというよりも文芸ドラマのようを思わせる。

刑事の聞き取り調査によって、物語が少しずつ明らかになっていく。
平和そうな村の人々もそれぞれ問題を抱えていたことが明らかになっていくのだ。
アンナがベビーシッターをしていた障害児は、両親の目の前で事故死をしていた。
アンナの父親は娘を溺愛し、執拗にビデオカメラに彼女の姿態を写していた。義姉にはまったく愛情を示さずに。
アンナの恋人は事件の朝まで一緒に過ごしていた。
アイスホッケーのコーチもアンナに一方的に好意を持っていた。
調べていくと、誰にも動機があるようにも思えてくる。

それに、アンナはそれまで頑張っていたアイスホッケーを突然止めてしまっていた。
なぜ?
アンナは殺される時に抵抗していない。
なぜ?

しかし、はっきり言って、この映画はミステリー仕立てではあるのだが、描かれている中心になるのはミステリーではない。
ミステリーの形をとった人間ドラマである。

主人公の警部もまた家庭に問題を抱えている。
妻は若年性認知症のようで施設に入院している。
彼が面会に行っても、もう夫とは認識してくれないのだ。娘のことも忘れている。
その娘に、お母さんはよくなっているよと気休めの嘘をつく・・・。

この警部が実に好い味を出していた。
思慮深げでいながら、自らの心の弱さもさらけ出す。
映画の冒頭に、「あなたに、手紙を書く、書こうと・・・」と書きかけて文字が乱れていく手紙を警部は読んでいる。
後になればこの手紙の差出人も判るわけだが、雰囲気を作るやり方としては巧みである。

事件の謎解きには、まあ、あまり期待しない方がよいです。
それよりもこの映画は、4つの家庭が抱えた人間ドラマです。
イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナッテロ賞で史上最多の10部門を受賞しています。