あきりんの映画生活

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「彼女がその名を知らない鳥たち」 (2017年) 究極の愛?

2017年 日本 123分
監督:白石和彌
出演:蒼井優、 阿部サダヲ、 松坂桃李

これが愛? ねじれた愛の二人。 ★★★☆

 

原作は沼田まほかるの同名作。魅力的なタイトルである。
イヤミスとして評判にもなったが、未読のまま鑑賞。
蒼井優阿部サダヲの共演作なのだが、この二人が、まあ、どちらも上手い。

 

冒頭、時計店にクレームの電話を入れている十和子(蒼井優)が映る.
ネチネチとした絡み方で、もうこの場面だけで、ああ、嫌な女だな、と思わせる。上手い。
そんな十和子は一緒に暮らす陣治(阿部サダヲ)の稼ぎで遊び暮らしている、いわばヒモ女。
自分勝手で、思いやりのかけらもないぐーたら女。
ああ、嫌な女だな。

 

一方の陣治は小汚い印象の冴えない男。
ただへらへらと十和子のご機嫌を取って、馬鹿にされてもひたすら十和子に尽くしている。
なに、この情けない男? どうしてそこまで尽くす?

 

おまけに十和子は、8年前に別れた黒崎という恋人のことを未だ忘れられずにいるのだ。
格好良かった黒崎と比べては、陣治を軽蔑しているのだ。
そのうえで十和子は働きもせずに、陣治の稼ぎで毎日を送っているのだよ。
もうこの二人がどうして一緒に暮らしているのか、訳、わかんな~い!と叫びたくなる。

 

やがて十和子は妻子ある水島(松阪桃李)と関係を持つようになる。
それでも陣治は、そんな十和子をストーカーまがいのことまでして大事に扱うのだ。
この二人、どうなっている?

 

ある日、十和子は刑事から、黒崎が行方不明であることを告げられる。
えっ、もしかして私を独り占めするために陣次が黒崎さんを・・・? 十和子に疑念が生じる。
そして、もしかすれば陣次は今度は水島さんにも同じ事をするかもしれない・・・。


十和子が一途に愛した黒崎だったが、彼は実は酷い男だったのだよ。女性を食い物にするような男だったのだよ。

そんなことにも気づけない十和子を陰から見守って案じる陣治。

観ている者も、陣治だったら彼女を守るために大それたこともやりかねないなあ、本当に陣治はそんなことまでしたのか? と引き込まれる。

さあ、どろどろの二人の関係はどうなっていく?

 

(以下、ネタバレに近づきます)

 

後半になって物語は大きく傾いていく。
それまで秘められていた(一方が忘れていた)十和子と陣治の関係が明かされていく。
えっ、そうだったのか。そんな過去があったのか。

 

この映画は観ていて楽しくなるような物語ではない。映像が素晴らしいわけでもない。
ただ、ただ、陣治と十和子の捻れた愛の形を描いている。
重く澱のように気持ちに残る映画だった。


不器用にただ一途に十和子を愛する陣治のそれは、純粋な愛だったのだろうか。