2019年 イスラエル 114分
監督:エラン・リクリス
出演:ベン・キングズレー、 モニカ・ベルッチ
中東を舞台にしたスパイもの。 ★★
モサド(イスラエルの諜報機関)の初老のスパイ、アヴラム(ベン・キングズレー)は最後の任務に就く。
それは、敵国シリアに化学兵器を提供しているベルギーの企業を調べることだった。
しかしアヴラムの行動はモサドにあやしまれ、監視役として若きエージェント(イタイ・ティラン)が送り込まれてくる。
現在もっとも風格のある俳優といえば、このベン・キングスレーではないかと思っている。
どんな役をやっても思慮深げで、なにか深い考えがあっての行動だろうなと思わせてしまう。
そんな彼の相手役だから、ヒロインのアンジェラ役には大物のモニカ・ベルッチおばさまである。
この映画の時、御年55歳。さすがに若い頃の華やぐような美しさはなくなったものの、存在感がある。
その化学博士のアンジェラは化学兵器を製造している会社の重役でもあるという情報が入る。
よし、アヴラムよ、アンジェラに近づき、化学兵器製造の証拠を掴め。
中東情勢はややこしい。いろいろな国の思惑が錯綜する。
それだから、そこが舞台でのスパイものとなると、誰が嘘をついていて、誰が誰を騙そうとしているのか、混沌としてくる。
この映画もかなり注意深く観ていないと、人間関係に置いていかれてしまう。
あれ、こいつは信じてもいい奴だっけ?
アヴラムはアンジェラと懇ろにもなっていく。
俺は任務のためにアンジェラを利用しているだけだ、決して彼女に惹かれたわけじゃないぜ。でも・・・。
アンジェラは俺を信じ切ってくれているのか・・・。彼女は本当に化学兵器製造に関わっているのだろうか?
二重スパイもいるようだ。裏切り、騙し合い。
あの暗いスパイ映画「裏切りのサーカス」を思い浮かべてしまうが、あれに比べれば、こちらの方がまだ単純だった。
激しいアクションはほとんどない、静かなスパイ映画だった。
タイトルの「巣の中の蜘蛛」は劇中に出てくるデータファイルの名称。
不満だったのは、物語にかなり余分な枝葉末節がついていたこと。
わざとややこしくしているのじゃないかと思えるほどで、それを取り払えばもっとすっきりとした物語になったとのにと残念だった。
真面目なスパイ映画なので、某シリーズのようなハッピーエンドにはなりません(あ、あちらも最新作は悲劇だったか・・・)。
スパイはいつも辛い目に遭うのです。
そして、2大名優はさすがでしたが、映画自体はもうひとつでした。