2009年 フランス 88分
監督:フランソワ・オゾン
出演:イザベル・カレ、 ルイ・ロナン・ジョワジー
静かな人間ドラマ。 ★★★
元薬物依存の妊婦とゲイの物語である。
いかにもフランソワ・オゾン監督らしい登場人物、設定で展開される人間ドラマ。
ゆっくりと進む物語に、観ている者の気持ちもゆっくりと揺れる。
恋人のルイがドラッグの過剰摂取でなくなったあとに、ムース(イザベル・カレ)は妊娠していることを知る。
ドラッグを断ち、出産することを決意したムースは海辺の田舎で独り暮らしをはじめる。
とそこに、ルイの弟ポール(ルイ・ロナン・ジョワジー)が尋ねてきて、しばらく一緒に暮らすことになる。
ムース役のイザベル・カレは、撮影当時は実際に妊娠6カ月だったとのこと。
海岸で、大きく膨れたお腹を誇らしげに見せる水着姿のムースには、これが母性だ、文句あるか、といった自然の強さがあった。
ポールは(オゾン監督の映画だから)ゲイであり、ルイとは血のつながりはなかったという。
映画の中でははっきりとはいわれていなかったが、ルイとポールも恋人同士だった時期があるのではないかと思える感じだった。
庭で朝の食事をとったり、二人で海岸に泳ぎに出かけたり。
ポールは村の若者の恋人(もちろん男性)を作ったりもする。そして3人でディスコに行ったりもする。
元薬物依存の妊婦と、ゲイの美青年。
奇妙な組み合わせの二人の、ほどよい距離感をたもっての共同生活が静かに続いていく。
二人の間に醸し出される雰囲気がよい。
余分な干渉はしないでいて、それでいてどこかで気持ちがつながっている。
ドラッグとか、未婚の母とか、ゲイとか、どれかひとつでも強烈なのに、それを自然にひとつの物語に絡ませていく。
世間的常識なモラルとかを気にする人にはむかない作品だが、いかにもオゾン監督らしいいささか波打ったような感情が漂っていた。
原題を直訳すると「避難所」、あるいは「心のよりどころ」といったところか。
ムースは果たして無事に赤ちゃんを産むことができるのだろうかと、危惧しながら観ていた。
もしかすると・・・。
物語の最後は、ムースの隠遁ならぬ”ムースの決断”だった。
オゾン監督、どれを観ても何かもやもやっとしたものを残していく。これ、何なのだろう?