あきりんの映画生活

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「カミーユ・クローデル」 (1988年)

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1988年 フランス 175分
監督:ブルーノ・ニュイッテン
出演:イザベル・アジャーニ、 ジェラール・ドバルデユー

女性彫刻家の半生。 ★★★☆

カミーユ・クローデルは、あのロダンの弟子で愛人でもあった女性彫刻家。
この映画はカミーユの弟の孫が書いた伝記を映画化している。
主演はあのイザベル・アジャーニだが、監督は彼女の元・夫。アジャーニの魅力を上手く引き出していた。

1885年、オーギュスト・ロダンジェラール・ドパルデュー)の弟子となったカミーユ(アジャーニ)は、扱いにくい素材だぞといわれた石で、足の像を彫る。
それを見たロダンカミーユの天賦の才を見抜く。
大作「地獄の門」の制作にかかっていたロダンは、助手として彼女の手腕を求める。
(あの有名な「考える人」はその「地獄の門」の一部である)
やがて内妻のいるロダンの恋人となっていくカミーユだったが・・・。

長い映画である。
しかも内容は芸術家同士の愛の葛藤を描いているので、19世紀のパリを背景に重厚な映像で、暗く、激しい。

男女の情愛とともに、天才同士の芸術上の競争のようなものも入り込んでくる。
芸術にとって切り離せないのは、影響、感化、示唆、真似、模倣、剽窃・・・。
どちらがどちらに影響を与えたのか、それは模倣にしかすぎないのか、進化発展させたものなのか・・・。
ロダンがあまりにも有名だったために、カミーユの才能は正当に評価されなかったのではないか、とも思えてくる。

カミーユは妊娠し、結婚を迫るが、ロダンは内妻とは別れない。
しかも嫉妬に駆られた内妻からカミーユは殺されそうにもなったりする。
ロダンは、この映画では二人の女性の間で決断をしない優柔不断な男性として描かれている。

この映画はなんといってもイザベル・アジャーニである。
美しい儚げな顔立ち、雰囲気なのだが、彼女が演じるのは常軌から逸脱したような女性が多い。
独特の存在感を持っている。
19歳の時の「アデルの恋」(監督はあのフランソワ・トリュフォー)も、狂気に陥ってゆく、そんな役柄だった。

ロダンと別れたカミーユは、創作に没頭する。
世間的な常識も無視して、とにかく自分の芸術の才能とのみ向きあっていく。
次第にその才能は評価されるのだが、それでもロダンに愛情の未練があり、それゆえの憎悪も激しくある。
そして、ついにカミーユは精神のバランスをすこしずつ失っていく。

よき理解者だった画商の計らいで開いた個展会場へ、奇矯な衣装で乗り込んでくるカミーユ
おびただしい数の石膏像をことごとく壊してしまうカミーユ

狂気を演じるアジャーニのすごいことと言ったら! 
カミーユがアジャーニに憑依しているのではないかと思うほどに、後半の彼女はすごい。
そして、あまりにも過酷な彼女の精神遍歴に、もしロダンカミーユと結婚していたら、と彼女の人生の分岐点を考えてみてしまったりもする。

母には疎外されていたカミーユだったが、弟ポールとは深く精神的に結ばれていた。
しかしそのポールによってカミーユは精神病院へ入院させられてしまう。
そして30年間の入院生活を送り、そのままこの世を去ったことが字幕で語られて映画は終わっていく。

良質の文芸大作を観た、という充実感をもたらせてくれる映画です。
この映画の時、アジャーニは33歳。
彼女が美しさと狂気はまるで裏表一体であるかのように魅せてくれます。
イザベル・アジャーニはこの映画でベルリン映画祭で銀熊賞(女優賞)、セザール賞でも主演女優賞を獲っています。