2022年 日本 123分
監督:片山慎三
出演:佐藤二朗、 伊東蒼、 清水尋也
サスペンスもの。 ★★★☆
「世界の終わりから」ですっかり惹きつけられた伊東蒼が出ているというので、鑑賞。
ちっとも美人じゃないのに(失礼)、何かを持っているな、この人は。
冒頭、中学の制服姿の楓(伊東蒼)が、通天閣の見える大阪の下町を懸命に走っている。
父・原田智(佐藤二朗)がコンビニでおにぎりを万引きしたというのだ。
この導入部で、しっかり者の娘が、母が亡くなったあと、情けないダメ父親を支えて生活してきたことがよく判る。
そして父親は、「指名手配中の連続殺人犯を見たんや。捕まえたら300万もらえるで」という言葉を残していなくなってしまった。
必死に父親の行方を捜す楓は、とある日雇い現場の作業員に父の名前を見つける。
ところが、父の名前の人物は見知らぬ若い男だった。あれ?
しかも、あの連続殺人犯の指名手配チラシに写っていたのは、父の名前のあの若い男だった。
サスペンスものとしてこの導入部は好くできていた。
純粋に父を心配する一途な楓の行動が、日常生活に割り込んできた謎をリアルなものにしていた。
やはり伊東蒼、いいよ。
この映画、ポスターでも映画案内でも主演が佐藤二朗となっている。
しかし途中まで観ていると、あれ、主演は別人物じゃないの? こっちの人が本当は主演じゃないの?
・・・違ったのだ。主演は間違いなく佐藤二朗だったのだ。
途中までは、事件に巻き込まれたダメ父を必死に探す健気な娘の物語だった。
その展開にすっかり油断していた。
しかしそれはほんの序章に過ぎなかったのだ。
中盤、そして後半と、物語は思ってもいなかった展開となっていく。
おお、そんなことが隠されていたのか・・・。
すっかり油断していて、すっかりやられたよ。
この映画はあまり情報を入れずに観る方が楽しめると思える。
特に連続殺人犯の正体とか、かなり映画感想などに書かれてしまっているが、それは読まずに鑑賞することをお勧めする。
ということで、私も物語についてはこれ以上書かない。
(実は映画の冒頭から周到な伏線が張られていたのだ。前半の父娘のやりとりも伏線だったのだよ。)
ちょっと情けない、ダメ父親役の佐藤二朗が好い。
阿部サダヲ演じるダメ人間ぶりとは違って、もっと泥臭い。そこが好いな。
事件が終わって、最後の親娘での卓球の場面にはやられた。すごい。
延々と続くラリーに二人の会話が重なる。決定的な一言も楓の口から告げられる。
楓はいなくなった父親を探したわけだが、父親の本当の姿も探しあててしまったわけだ。
そしてそのあとに二人がエア卓球をする場面となり、映画は終わっていく。すごい。
何がすごいのか。それはもう観てもらうしかない。