あきりんの映画生活

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「熊座の淡き星影」 (1965年) 姉弟の禁断の愛?

1965年 イタリア 100分 
監督:ルキノ・ビスコンティ
出演:クラウディア・カルディナーレ、 ジャン・ソレル

ギリシャ悲劇に材を取った家族物語。 ★★☆

 

結婚したばかりのサンドラ(クラウディア・カルディナーレ)は、米国人の夫と共に故郷の実家を訪れる。
彼女は父をアウシュビッツの収容所で亡くしており、再婚した母は精神を病んでいた。
実家には幼い頃から仲のよかった弟のジャンニ(ジャン・ソレル)も暮らしていた。

 

再会した姉弟は、やや異様とも思えるほどに親密なハグをする。
その親密ぶりには、サンドラの夫もあっけにとられるほど。
そしてジャンニと義父は互いに嫌い合っており、狂気にとりつかれたように母はピアノを弾くのだ。
暗い家族の物語なのだ、白黒の画面も暗い。それがこの映画である。

 

物語の裏に、はっきりとは描かれない疑惑が観る者に投げかけられている。
ひとつは、サンドラとジャンニの関係。
かつての二人は、姉弟でありながら肉体関係もともなう恋人同士だったのではないか、と思わせるのである(実際に、怒りにまかせて義父がそれを口する)。
それほどにこの姉弟の親密な関係は、他の人の関与を拒んでいる。

 

今、他の男性と結婚してしまった姉に対して、弟ジャンニの心は激しく揺れ動いているようなのだ。
それが映画のラストにつながっていく。

 

もうひとつの疑惑は、再婚しようとしていた義父と母が父をナチスに密告したのではないか、ということである。
父を死に追いやったことがあればこそ、姉弟は絶対に義父も母も許そうとはしていないのではないか、と思わせるのだ。

 

この映画はギリシャ悲劇「エレクトラ」を下敷きにしているとされている。
エレクトラ」では、父殺しをした義父と母への復讐を息子が果たすのだ。
ちなみに、映画タイトルはある詩からとられており(寡聞にしてまったく知らない詩人、作品)、映画中でジャンニが書いている自伝小説の題名でもある。

 

映画の最後、屋敷の一部を図書館として町に寄贈したことの返礼に作られた父の胸像の除幕式が行われる。
うわべは華やかな、晴れがましい一日なのだが、その片隅では悲劇も起こっていたのだ。

 

私はビスコンティ監督作とはどうも波長が合いにくい。
この作品は、彼の作品の中ではミステリー風でもあり見やすいとの感想が多い。
しかしそれほど入り込むことはできなかった(もちろん、カルディナ-レは魅力的だったが)。

 

ヴェネツィア映画祭で金獅子賞を獲っています。