あきりんの映画生活

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「ボイリング・ポイント」 (2021年) こんなに忙しくてどうすりゃいいんだ!

2021年 95分 イギリス 
監督:フィリップ・バランティー
出演:スティーブン・グレアム

人間ドラマ。 ★★☆

 

ロンドンの高級レストランが舞台。
クリスマス前の金曜日ということで大忙しの厨房の一夜の有様を、オーナーシェフを主人公に描いている。
全編90分をワンショットで捉えるという意欲的な撮り方でもある。

 

オーナーシェフのアンディ(スティーブン・グレアム)は、妻子との別居問題をかかえ、店の衛生管理検査で評価を下げられ、ストレスばかり。
10人余りもいる店のスタッフの中にはまったくやる気のない者や、初歩的なミスをくり返す者もいて、アンディの苛々はつのるばかり。
頼りになるのはセカンド・シェフのカーリーだけ。彼女だけはしっかり者。頼むよ、しっかり支えてくれ。

 

大忙しで混乱する厨房を描いた映画といえば「ディナーラッシュ」が思い浮かぶ。
しかしこの映画はあれよりも現実的。もっと大変。
主人公のストレスは増大するばかりで、どうすりゃいいんだ状態。

 

しかしアンディもかなり問題人物なのである。
シェフ、今夜の予定料理の食材が足りません、発注はどうなっていますか?
すまん、私が忘れていた、いろいろと考え事があってうっかりしていた。何か別のメニューにしよう・・・。
おいおい、オーナーシェフがそんなことで好いんか?

 

しかも、アンディはひっきりなしにボトルに入れた水分を口に含んで補給するのだが、その中身はどうやらウォッカのようなのだ。
おまけに奥さんに手を切ると約束したヤクも断ててはいないようなのだ。
おいおい、スタッフをしかる前に自分がちゃんとしなければ・・・。

 

客もいろいろと問題を起こしてくれる。
ワインや料理に細かい注文をつけて何かといちゃもんを言う客や、黒人ウェイトレスを見下す白人客など。
嫌だねえ、こんな客は、という奴らが一杯。

 

スタッフ同士、特に料理人と接客係は互いの立場から衝突する。
いろいろな客と接する接客係りはトラブルにならないように気を遣う。
このラム肉にはもう少し火を通して欲しいと4番の客が言ってるわ。
すると料理人のプライドと衝突する。ラム肉のベストはこのピンク色の焼き加減なんだよ。味の分からない客の言うことなんか聞けねえ。

 

レストランの厨房、裏舞台は大変なのだ。
次から次へとくるオーダーに、よくもまあ混乱しないものだ。

 

さらにレストランの出資者でもある著名シェフとグルメ評論家がふいに来店したり、その上、理不尽な提案をしてきたり。
胡桃アレルギーの客の連れが気をつけて欲しいと言う。はい、わかりました、とそれを聞いたスタッフはメモをしたり。
あ、これ後で事件が起きるんじゃないかな・・・。

 

もう店の中は、次から次からと訪れるストレスの原因になるような問題で一杯。
店は火にかけられた鍋のように熱くなっていく、おお、”ボイリング・ポイント”に達してしまいそうだぞ。

 

業界の裏側の現実を見せられる映画は概して面白い。
この映画もそんな興味深い内容だった(極端だったけれど)。
これからは、注文した料理が少々遅くても文句は言わないでおこうと思ってしまったぞ。