1997年 フランス 105分
監督:クロード・シャブロワ
出演:イザベル・ユペール、 ミシェル・セロー
詐欺師の顛末は。 ★★☆
しばらく前に亡くなったクロード・シャブロル監督といえば、フランスのヒッチコックと言われたほどのサスペンス映画の巨匠だったようだ。
しかし、これまでに観た数本の作品はどれもあまり私には合わなかった。
どうも、ぬるいのである。サスペンスなのに緊迫感が少ないのである。
さて、この映画はどうだろう?
親子ほども歳の離れた初老のヴィクター(ミシェル・セロー)とベティ(イザベル・ユペール)の詐欺師コンビ。
カジノで見かけた人の良さそうな男をベティが色仕掛けで誘い、薬で眠らせて、ちゃちな抜き取りをする。
有り金を全部抜き取らずに半分ぐらい残しておくのがルール。
すると、被害者は案外盗まれたことに気づかないとのこと。本当?
ベティ役に、シャブロルの映画ではお馴染みのイザベル・ユペール。
自由奔放な雰囲気で、男を手玉に取る悪賢さにも長けている。ぴったりの役柄。
そして初老の男ビクター役にミシェル・セロー。彼が胡散臭そうな人物を演じて実に好い。
ところでこの二人の関係は?
ただの詐欺の師弟関係だけではなさそうなのだが・・・。愛人関係?
ある日、ベティが大金がからむヤマを引っ張ってきた。
1年前からつき合っていたモーリスは企業の経理担当なのだが、集金したお金を持ち逃げしようとしているらしい。
これをいただいてしまいましょうよ。
モーリスとべたべたするベティを監視しながら、ビクターはどうも心穏やかではいられないようだ。
このあたり、二人の関係をはっきりとは描かないものの、微妙な男女関係を匂わせていて、上手い。
(映画の最後あたりで、ベティはビクターのことを”パパ”と呼ぶのだが、まさか父娘ではないよねえ。)
二人が狙ったその大金は、実はマフィアのものだったのだ。
ばれたら大変なことだが、案の定、モーリスは眼から脳にかけて釘を刺されて殺されてしまった。ええっ!
コンゲームっぽいところも出てくるのだが、どうもしっくりしないのが、大金を入れたトランクのすり替え。
二人は楽しそうに運び屋を騙したようにしていたが、あれ、成功していた?
という具合に、中盤からはどうも映画にしまりがなくなってくる。何やってんの、この二人?という感じ。
そうなのだ、まんまと大金をせしめた二人なのだが、互いを騙そうとしているような雰囲気にもなってくる。
そして、二人を捕まえたマフィアもやけに寛大だったりする。大金を半分も失って、二人を許してしまう?
さてこの二人、結局どうなる?
映画の原題は「もうおしまいですよ」という意味らしい。
カジノのルーレットでチップを張るタイミングの終わりを宣言するときの決まり文句らしい。
すると、「最後の賭け」というよりも、「賭けの最後」といったところだろうか。
シャブロルにしては珍しいコミカルな面もあって、観やすい作品にはなっていた。
しかし、サスペンスものにしては、やはりぐだぐだ感があった。
そこがシャブロルの持ち味と言ってしまえばそれまでなのだが・・・。
あまり身構えずに、すこし斜に構えたお洒落映画(?)を観る感じでよろしいかと。