あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「新幹線大爆破」 (1975年) どこにも停まれない!

1975年 152分 日本 
監督:佐藤純彌
出演:高倉健、 宇津井健、 千葉真一、 山本圭

鉄道パニックもの。 ★★★★

 

当時は任侠映画が専門(?)だった東映が作ったということで、話題になった作品。
その物語の設定も、新幹線に仕掛けられた爆薬が時速80km以下になると爆発するという斬新なものだった。
(この映画の20年後に作られたキアヌ・リーブスサンドラ・ブロック「スピード」は、このアイディアを参考にしたと言われている)

 

東京発博多行きの新幹線ひかり109号に爆弾を仕掛けたという脅迫電話が入る。
時速80キロ以下に減速すると爆破する仕掛けだ、ということで新幹線はどこにも停車することができない。
国鉄(今のJR)と警察は、新幹線が終着駅の博多に到着するまでに事件を解決しなくてはならないというタイムリミットも背負っているわけだ。
犯人は500万ドルを要求してくる。

 

当時の”夢の超特急”はいわゆる団子鼻と言われた新幹線。懐かしい。
映画タイトルから国鉄が協力を拒否したために(国鉄にすれば無理はないか)、撮影はセットやミニチュアを用いておこなわれている。
それなりに頑張ってはいるのだが、せっかくこれだけの内容なのだから、実物を使っての撮影だったら好かったのになあ。

 

そしてこの映画の秀逸だった点は、爆薬を仕掛けお金を要求する犯人役が高倉健だったところ。
ぶっきらぼうな感じがピッタリで、犯人側のドラマもきちんと描かれており、犯人側にも感情移入できるようになっていた。
(映画の最後、国外脱出を謀った空港では、(”男の哀愁”の健さんだから)なんとか逃がしてやりたいと思ってしまったぞ)

 

さて、速度を落とせない新幹線だからもちろん駅に停車はできない。
となると、先行する新幹線はすべて待避させないといけない。大変だ。

 

あっ、前方に故障車が停まっているぞ、このままでは衝突してしまう。どうする?
急遽ひかり109号を上り線路に入れようとするのだが、そこには上りの新幹線が走ってくる。どうする?
しかも分岐点を脱線の危険のある制限速度以上で走らなければならない。
ここは間一髪のすれ違いなどで緊迫感あふれる場面だった。

 

こうして、犯人と交渉を続けながら、なんとか新幹線を窮地から救おうとするのが国鉄宇津井健。直情熱血漢という感じを好演。
彼からの指令をもらいながら新幹線を運転するのが千葉真一。若い!
そのほかにも志村喬、永井智雄、丹波哲郎田中邦衛など、豪華顔ぶれが勢揃いしていた。東映、すごいな。

 

それに、こういう古い映画では、のちに有名となった俳優の若い頃の姿を見ることができるというおまけの楽しみもある。
志穂美悦子が電話の交換嬢を、多岐川裕美は航空会社のカウンター嬢をしていた。

 

犯人との交渉の傍らで、必死に車両に仕掛けられた爆薬を見つけようとする。
鉄橋を渡るときに車体下部を何台もの高速度カメラで撮影して、不審物を見つけようとする。やるねえ。

 

車内では何が何でも下車したい乗客たちが騒ぎだし、妊婦が早産してしまうという事態まで起こってくる。
要求金の受け渡しなどもよく考えられていた。
「天国と地獄」での身代金の受け渡しにも感心したが、この映画の高速道路を巧みに使った方法も好かった。

 

大いなる不満を一つだけ。
ついに爆弾を見つけ、起爆装置の解除の時にいよいよ赤、青の線を切断するのだが、時間に追われているばかりで緊張感が全くなかった。
ほら、あの「ジャガーノート」の名場面のように、赤?それとも青?どちらを切ればいいんだ?という緊張感が欲しかったなあ。

 

50年近く前の映画ですが、最後まで見せ場が続き(繰り返しになるけれど、逃亡を図っているのが健さんだかから、ね)、好い日本映画を観たなと満足させられます。

進化した映像技術でのリメイク作を観たい気もするが、やっぱり健さんがもういないからなあ・・・。