あきりんの映画生活

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「夜叉」 (1985年)

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1985年 日本 128分
監督:降旗康男
出演:高倉健、 田中裕子、 いしだあゆみ、 ビートたけし

雪の港町、男と女。 ★★★☆

降旗康男監督+高倉健主演+木村大作カメラ+北国の舞台。
こうくれば、それはもう「駅STATION」だし、「居酒屋兆冶」だし、「鉄道員(ぽっぽや)」だし、と良品ばかり。
この映画もこの顔合わせで外れるわけがない。

ひと言で言ってしまえば、雪降る漁港での、過去を背負った男(高倉健)と、都会から流れてきた女(田中裕子)の情念ドラマ。
そこに男に寄り添ってきた妻(いしだあゆみ)の辛さが絡む。
理屈ではない男と女のドラマに、降りしきる雪と、荒く打ち寄せる日本海の波がよく合っている。

修治(高倉健)は、かっては「夜叉の修治」として大阪ミナミで名を売っていた元ヤクザ。
彼は好きになった冬子(いしだあゆみ)と一緒になるために足を洗い、冬子の故郷で漁師をしていたのだ。
その港町に大阪ミナミから流れてきた螢子(田中裕子)が居酒屋を開く。
彼女には矢島(ビートたけし)というヒモがいて、平和だった町に覚醒剤を持ち込んでくる。

とくると、覚醒剤で駄目になっていく町の人々を救うために周治が立ち上がって暴力団と戦う、そんな展開を予想するかもしれない。
違うのである。そんなにカラッとはしないのである。
もっとどろどろとした、というか、哀しく粘りつくような男と女のドラマなのである。

周治の背中には、人には見せることのなかった夜叉の彫り物があった。
矢島とのいざこざで周治の服が破れ、彫り物が港町の人々に露わになってしまう場面がある。
冬子が必死になってそれを隠そうとする。
でも、いくら人目から隠そうとしても、彫り物を消すことは出来なかったのだ。
冬子の母親が呟く、「夜叉は背中にあるんじゃない、周治さんの心にあるんだ。」

終盤になって、螢子に頼み事をされた周治は、古巣の大阪ミナミに出かける。
この時の周治の心境は、好い仲になってしまった螢子のためだったのか、それとも単にミナミでもう一度暴れたかったのか。
私は、やはり彼の中にはまだ夜叉がいたからだろうと思ってしまった。

それからどうなったのか。
(以下、ネタバレ)

ちょっときれいにまとめすぎた気がしないでもないが、お帰りなさいと待っていてくれた冬子と一緒に雪の港町を歩く姿はよかった。
きっと、これで夜叉は彼の中から消えたのだろうと思えた。

雪の港町です。
男・高倉健の映画です。