2019年 日本 115分
監督:三池崇史
出演:窪田正孝、 小西桜子、 ベッキー、 染谷将太、 大森南朋
バイオレンス恋愛もの。 ★★★☆
タイトルは「初恋」である。
しかし監督は三池崇史である。誰もロマンス溢れる純愛ものは期待しないだろう。
その通り。恋愛ものではあるのだが、バイオレンスなのである。
余命わずかと診断されたボクサーのレオ(窪田正孝)は自暴自棄になってしまう。
どうせ死ぬんだ、俺にはもう怖いものなんか何もねえぞ。
そんな彼はヤクザ組織から逃げようとした少女モニカ(小西桜子)と出会う。
二人は訳が分からぬままに裏社会での争いの渦に呑み込まれていく。
ということで、これは世間からははみ出したような二人が出会ったたった一夜の物語。
舞台は新宿・歌舞伎町。
どろどろとした欲望が剥き出しで渦巻いているような街。
モニカを追いかけてきた男を、レオは反射的にノックアウトしてしまうのだが、その男・大伴(大森南朋)は悪徳刑事だった。
大伴はヤクザ組員の加瀬(染谷将太)と手を組んで、組織の資金源である麻薬を横取りしようと企んでいた。
そこに組と対立している中国マフィアが絡んでくる。
こうしてヤクザに追われるレオとモニカは、ヤクザと中国マフィアの抗争にも巻き込まれていく。
塩見三省が扮する組長代行も凄みがあったが、染谷将太のチンピラ・ヤクザ役もそれなりに堂に入っていた。
どこまでいってもチンピラ的な雰囲気を漂わせながらも、平気で殺人もしてしまう切れっぷりが好かった。
彼が美味しいところをかなり持っていっていた。
キレっぷりと言えば、この映画で話題になったのはベッキー。
殺されてしまった下っ端ヤクザの情婦なのだが、彼の恨みを晴らすべく鬼の形相となる。
大きなバールをズルズルと引きずって歩く姿は、もはやゾンビである(笑)。
もうロドリゲス映画の一場面と言ってもいいぐらいだったぞ。
脇役で印象的だったのは、対立する中国マフィアの女組員。
中国人なのに高倉健を崇拝していて、仁義を重んじているところが面白い。
最後のあわやという場面では、主人公の二人を逃がしてくれたりもする。
モニカは幼い頃から継父の性的暴行を受けていたようだ。
そんな彼女が麻薬の禁断症状で見る幻覚が、妙にギャグ要素があるものだったのには違和感があった。
あそこは変にふざけない方が好かったのではないかなあ。
さて終盤、抗争場面になると、腕は切り落とされるわ、首は吹っ飛ぶわ。
明け方近くになって、警官隊に包囲されている駐車場からの脱出場面となると・・・。
これには笑ってしまった。
おいおい、そんなことまでするのかよ。さすが三池監督。
和製タランティーノよりももっとすごいぞ。和製ロドリゲスだな。
確かに”初恋”なのだろうけれど、三池監督らしい一筋縄ではいかない物語だった。
繰り返しになりますが、純愛ものではありません。バイオレンスものですよ。