あきりんの映画生活

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「パッション」 (2012年)

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2012年 フランス 101分
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ノオミ・ラパス、 レイチェル・マクアダムス

サスペンス。 ★★★

5年ぶりのブライアン・デ・パルマ監督に、2人の魅力的な女優の競演。
とくれば、これは観なくてはいけません。

野心家のクリスティーン(レイチャル・マクアダムス)は大世界的広告会社の女性幹部。
クリスティーンは、優秀な部下イザベル(ノオミ・ラパス)の斬新なアイデアを横取りしたり、彼女を出し抜いたイザベラをパーティの席上で笑いものにしたりする。
イザベラは心を病みはじめ、次第にクリスティーンへの憎悪が抑えきれなくなっていく。

監督お得意のサスペンスものだが、これまでお馴染みだったエロ要素は、(残念なことに)控えめ。
この映画はアラン・コルノー監督の遺作「ラブクライム」という映画のリメイクだそう。
このオリジナルは未見なのだが、あらすじはほぼ同じなのに、雰囲気はまったく違うようだ。
そりゃ、そうだ、デ・パルマだもの(笑)。

マクアダムスが狡猾で意地悪な悪女ぶりをみせる。鮮やかな金髪で華やか。
それにひきかえ、黒髪のラパスはじっと耐える地味な女。陰気な感じで迫ってくる。
こういう女がいざとなると怖いんだよねえ。

イザベルの腹心の部下にダニ(カロリーネ・ヘルフルト)。
イザベルのために献身的に尽くしてくれる。あれ、彼女、意外に存在感があるなあ。
ちなみにダニは赤毛。監督も計算しているなあ。
彼女はどう絡んでくるのだろうと思っていたが、終盤になってキー・パーソンになってきた。
なるほど、そういう役回りだったのか。

デ・パルマのことなので、サスペンスといっても、どこかもたついた感じがある。
なにかスマートな緊張感を邪魔するような、そんなもっさり感がある。
そこがデ・パルマらしいとも言える。そう、彼はこの雰囲気なんだよなあ。

エロ要素は控えめ、と書いたが、デ・パルマのことだから、皆無というわけではない。
クリスティーンは仮面プレイが好きな変態的な性の持ち主であるし、イザベルとはレスビアン的な雰囲気も漂わせている。
それに、ダニだって・・・。

ついに殺人事件が起こり、犯人は誰だ?ということになる。
一応の目くらまし映像などがあるのだが、観ている誰にだって犯人は分かっている(苦笑)。
種も仕掛けも単純そのもの。
だから、この映画は本格的に謎を楽しむのではなく、そんな状況を楽しむためのもの。

脚線美をとらえる映像。回り階段の俯瞰映像。クライマックスでの2画面分割。夢オチのような部分。ナイフによる首切り先殺人。などなど・・・。
これまでのデ・パルマ映画のファンならば嬉しくなる部分もたくさんある。
これはもうマンネリというよりも、デ・パルマはこういったものを撮りたいがために映画を作っているのだろうと思えてきて、それでいいんだよと言いたくなる。

つけ加えるならば、音楽が好い。
サスペンスの雰囲気をぐっと盛り上げてくれている。
音楽担当のピノ・ドナッジオという人は、あの「殺しのドレス」や「ボディ・ダブル」といったデ・パルマのエロティック・サスペンス映画でも組んだ人とのこと。なるほど。

本格的なサスペンスを期待する方には物足りない作品かもしれない。
しかし、デ・パルマ映画を期待する人には、久しぶりに好かった、という作品です。