2023年 123分 イギリス
監督:ガイ・リッチー
出演:ジェイク・ギレンホール、 ダール・サリム
アフガニスタン戦争もの。 ★★★☆
2018年当時、アメリカはタリバン壊滅のためにアフガニスタンに武力介入をおこなっていた。
主人公のキンドリー(ジェイク・ギレンホール)はタリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍曹長。
彼はアフガン人のアーメッド(ダール・サリム)を通訳として雇っていた。
この映画はアフガニスタン問題、そしてその最中に起こった兵士と現地人通訳の絆を描いている。
それは死と隣り合わせの状況の中での物語であった。
ガイ・リッチー監督は正攻法でまったく緩むことなく、この重い物語を描いていた。
キンドリーの部隊は突き止めたタリバンの武器弾薬貯蔵地を急襲するのだが、タリバンの猛烈な反攻にあう。
この戦闘場面は凄まじい。リアルに、戦闘というのはこんなにも怖ろしいものなのだということが伝わってくる。
そしてキンドリーとアーメッドの二人だけが辛うじて生き延びる。
しかしキンドリーは意識も定かではないような重傷状態だった。
その彼を、アーメッドはなんと基地まで連れて帰ろうとするのだ。
もちろんタリバンは必死になって二人を探し出そうとしている。見つかれば即殺される状況である。
そのなかで生死の境目にあるキンドリーを、あるときは背負い、あるときは手に入れたボロ車で、そして粗末な荷車で運ぶのだ。
整備された道を行けばすぐに見つかってしまう。だから道もない山を必死に越える。
アーメッドのこの逃避行は凄まじく困難なものであり、辛さを伴うもの。
重たそうな荷車ででこぼこの荒れ地を進む。
どうしてここまでしてキンドリーを助けようとするのだろうと訝しくなるほど。
しかしその甲斐あってキンドリーはなんとか生還できて、傷病兵としてアメリカに帰国するのだ。
帰国したキンドリーは退役軍人として平和な生活に戻ったのだ。
しかし、アメリカ軍通訳をすれば米国移住の書類がもらえるはずだったアーメッドはそのままアフガニスタンに置き去りにされてしまったのだ。
これは辛いぞ。
アーメッドはタリバンに厳しく追われることになる。
友人や身内の手助けを受けながら身を隠し、逃げのびる日々を送っていたのだ。
通訳として米軍に協力したアフガン人は、タリバンにとっては同胞を裏切った敵である。
米軍兵士以上に憎まれており、実際に、米軍通訳をしたアフガン人は多数殺されている。
一方のキンドリーもアフガニスタンでの記憶が心の平安を蝕んでいた。
アーメッドがアフガニスタンに取り残されていることを知ったキンドリーは、アーメッドを探し、保護するために再びアフガニスタンへ向かう。
キンドリーはアーメッドに対して恩義と共にある種の後ろめたさのようなものを感じていたのではないだろうか。
映画の後半はキンドリーとアーメッドの再会、そして決死の脱出劇。
この部分も緊張感にあふれる見事なものだった。
この映画の副題は「約束の救出」。
映画の最後には”コヴェナント”の意味が映された。いわく、契約、誓い、約束。
その通りに熱い友情と信頼を、いささかのぶれもなく骨太に描いていた。
ガイ・リッチー監督が大きく飛躍した作品だと思えた。