あきりんの映画生活

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「燃えよ剣」 (2020年) 新選組副長・土方歳三伝

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2020年 日本 148分
監督:原田眞人
出演:岡田准一、 鈴木亮平、 柴咲コウ

土方歳三伝。 ★★☆

 

幕末に数年間だけ存在していた新撰組という”人斬り集団”。
その副長を務め、大政奉還のあとも会津、仙台、そして函館と、最後まで戦いを続けた土方歳三の伝記物である。
原作は司馬遼太郎の同名小説(未読)。

 

土方歳三岡田准一)は、田舎の町道場仲間である近藤勇鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)と共に武士になる夢のために京都へ。
やがて芹沢鴨らと一緒に、京都守護職となった会津藩のもとで新選組を結成する。
京都市中の警護という目的だったが、時代は大きく揺れ動いており、新撰組も翻弄されていく。

 

冒頭から繰り返し流れる甘い旋律。はて、聞き覚えのある曲だったが何だった?
途中で気がついた、なんとコンチネンタル・タンゴの「真珠取り」だった。
画面とよく合っていて、時代劇のバックにこの曲を流すセンスに感心した。

 

はじめの頃に土方役の岡田准一が小刻みなひょこひょことした可笑しな歩き方をしていた。
似合わないなあと思いながら見ていたのだが、近藤にも、その歩き方は止めろ、と注意されていた。
やがて新撰組の隊律を作ったりしてその存在感をはっきりさせるにつれて、貫禄ある歩き方になっていく。
芸が細かいなあ。

 

尊皇攘夷から公武合体、尊皇倒幕へとそのころの政治情勢はややこしい。
一時は対立していた薩摩藩長州藩が手を組んだり、幕府支配下にある会津藩と朝廷との関係とか、いろいろとややこしい。
それぞれの思惑がからみ合って、どこと手を組んでどいつを裏切るか、政治は個人を踏み越えて画策されていく。
そうした情勢の中での武闘集団である新撰組は怖れられ、またある意味ではいいように利用されていく。
悲劇の集団という見方もそんなところから生まれてくる。

 

岡田准一を始めとする殺陣は見応えがあった。
腰を低く落とした彼の殺陣は「散り椿」でも堪能できたのだが、映像的に美しい。
有名な池田屋襲撃の場面も、天井の低い室内での斬り合いで、リアル感があった。
(激しい戦いが一段落した場面で、近藤勇らが疲れ切って座り込んでいるのは、なるほど、そうなるだろうなと思った。100m走を何本も走ったようなものか。)

 

土方が恋に落ちるのが絵師のお雪(柴咲コウ)。
原作には登場しない人物とのことだが、物語に花を添えていて成功していた。

 

鈴木亮平。このところ彼の活躍はすごい。
なんといっても「弧狼の血」での切れっぷりがすごかったが、この映画では豪放磊落な近藤勇で、緻密な土方とのコンビを印象づけていた。
人斬り・岡田以蔵役に村上虹郎。彼は「るろうに剣心」では沖田総司だった。映画って面白い。(もちろん人斬り抜刀斎は登場しません 苦笑)

 

2時間半の長さだが、それでもこれだけの波瀾万丈の一生を描くのは大変である。
土方歳三の最後の函館五稜郭での戦いまでよく描かれていて、正当派の時代劇になっていた。
しかし、どうしても駆け足的になっている感があったのは、やむを得ないか。