2021年 109分 アメリカ
監督:ダグ・リーマン
出演:トム・ホランド、 デイジー・リドリー
SFアドベンチャーもの。 ★★☆
汚染した地球から人類が他の星へ脱出している時代の物語。
母船は新たな星へ近接したのだが、偵察船は墜落してしまい、ヴァイオラ(デイジー・リドリー)だけが一人生き残った。
すると、おお、人間の男たちがいる!
この星には、かつて入植を試みた人類の生き残りがいたのだ。
しかし、この星に移住してきた地球人の女性はみんな先住生物のスパクルに殺されてしまっていた。
だから男しか生き残っていない。女がいないから子供もいない星だったのだ。
そしてこの星の一番特異的なことは、男たちが頭の中で考えたことや心の中の思いが”ノイズ”となって外に出て行くことなのだ。
このノイズは画面では煙のようなものとして男の身体から立ち上っている。その考えはみんなに見えてしまうのだ。
こりゃかなわんね。嘘もつけないし、悪事を考えることもできない。
そんな中でノイズを出さない男が首長のプレンティス(マッツ・ミケルセン)。
悪賢いことを考えても他人に知られない唯一の人物。こりゃ権力を握るよなあ。
その片腕となっているのが牧師。彼は神のお告げを聞くことができて、有無を言わさずに皆にそれを強いる。
さて。森に墜落したヴァイオラを助けたのがこの星で生まれ育ったトッド(トム・ホランド)。
初めて見た女性にびっくり(当然のこととして初心なのだよ)。
彼女がノイズをださないことにまたびっくり。
ヴァイオラを捕らえて利用しようとするプレンティス。
彼女を守ろうと、トッドは新たな地に在るという別の集落に向かう。
とにかく思っていることは全部ノイズとなって聞かれてしまうのは厄介。
トッドがヴァイオラのことを可愛いなあと思ったら、それも全部ヴァイオラに知られてしまう。
わあ、恥ずかしい。どうしよう・・・。
必死に他のことを考えようとするトッド。やっぱり初心だねえ。
クライマックス近くで、悪役だった牧師が告白する、俺は間違っていた・・・。
彼は神のお告げを聞くことができる人物として牧師になり、権力を握っていたのだが、その神のお告げというのは実は自分の心が発したノイズに過ぎなかったのだ。
アホな奴だな。しかし、お前の罪は重い。
考えていることがノイズとなって露わになってしまって他人に知られてしまう世界。
これはとてもじゃないが、私は生きていけない世界。
ある意味で、生きていくことが残酷にも思える世界だぞ。
この設定は独創的で、大変に面白い。
しかしこの映画がその独特の秩序世界での物語に成功していたかというと、どうも設定を生かし切れていなかった感がある。
もっと傑作になったのではないかい?
原作の小説は3部作とのこと。これはその第1部の映画化らしい。
このあとどうなるのだろう?