1987年 デンマーク 102分
監督:ガブリエル・アクセル
敬虔なおとぎ話。 ★★★
舞台は19世紀後半のデンマークの小さな漁村。
敬虔な村人たちが住む貧しい村に、人格者のプロテスタント牧師がいて、二人の美しい娘がいた。
村を訪れた男たちはそれぞれの娘に求愛をしたが、娘たちは信仰の道を貫いた。
牧師が亡くなったあとも、娘たちは貧しい暮らしのなかで村人たちと一緒に信仰に支えられた生活を慎ましく送っていた。
と、こう紹介してくるととても地味な物語のように思える。
確かにそうなのだが、落ちついた画面は大変に美しく、お隣の国の画家、フェルメールの絵を思わせるような上品さがあった。
絵本を思わせる画面、善良な慎み深い人々。気持ちが清らかになってくるような雰囲気なのである。
そんな村の姉妹のところへ、パリの政治変革によって家族を亡くした女性バベットが身を寄せる。
他に行く場所もないのです、給料も要らないから女中としておいてください。料理は得意なのです。
それから何年もの月日が流れたある日、バベットの買った宝くじが当たり、彼女は一万フランという大金を手にする。
バベットはそのお金で材料を買いそろえ、村人たちに晩餐を供したいと言う。
ここから物語は大きく動く。
バベットが作る料理は、実は並の料理ではなかったのだ。
本物の海亀のスープに、本物のうずらのパイ。何種類もの年代物のワインも注文して取りそろえる。
みるからにすごいご馳走。
はて、バベットって、何者?
面白いのは村人たちの反応。
バベットが注文して取りそろえた材料、海亀やら、何羽ものうずらやら、を見た彼らは、バベットが作る料理はきっと悪魔の料理に違いないと思い込む。
だから、たとえどんなに料理が美味しくても一切そんなことを口にしてはいけない、そんなことを口にすれば神様の罰が当たるに違いない・・・。
しかし、料理は否応なく美味しいのである。
村人たちは何も言わないのだが、顔は自然に喜びにほころんでくるのである。
晩餐会に招待されたグルメの将軍がいて、なにも事情を知らない彼はバベットのつくった料理をひとり褒め称える。
彼の感嘆具合によって、料理がいかに素晴らしく、ワインがいかに貴重なものであるかということが、観ている者にもわかる。
観ている者も楽しくなってくる。
晩餐会が終わり、幸せなひとときを過ごした村人たちが引き上げていく。
バベットはこれからどうする?
ほのぼのとしてくる、おとぎ話のような映画です。
アカデミー優秀外国語映画賞を取っています。