1994年 アメリカ 98分
監督:マーク・ライデル
出演:リチャード・ギア、 シャロン・ストーン、 ロリータ・ダヴィドヴィッチ
三角関係物語。 ★★☆
冒頭に、田舎道で車をとばしていたヴィンセント(リチャード・ギア)が事故にあう場面が映される。
激しくローリングしながら斜面を転げ落ちていくヴィンセントの車。
観る者はこれから始まる物語のどこでこの場面につながるのだろうと思いながら鑑賞することになる。
売れっ子建築家のヴィンセントは妻サリー(シャロン・ストーン)と離婚して、今はコラムニストのオリヴィア(ロリータ・ダヴィドヴィッチ)と愛人関係になっている。
しかしサリーと2人で立ち上げた建築事務所では、ヴィンセントとサリーは相変わらずパートナーとして一緒に仕事をしている。
いささか微妙な位置関係の2人で、現在の彼女であるオリヴィアも感情的にどうもすっきりしない。
フランス映画「すぎ去りし日の…」のリメイク作とのこと。
オリジナル作については何も知らなかったのだが、ロミー・シュナイダーが出ていたらしい。
さて。
ヴィンセントたちの事務所が手がけた新しい美術館の完成記念パーティが開かれる。
元妻と現在の愛人を会わせたくないヴィンセントは、君は来なくていいとオリヴィアを置いてく。
面白くないのはオリヴィア。パーティ会場に酔ったオリヴィアが乱入してきてしまう。初めまして、あなたが彼の元奥さんね。
冷静に対応しようとするサリー、あたふたとするばかりのヴィンセント。
とどのつまりはヴィンセントが煮え切らないのが事態をややこしくしているのだよ。
自分は新しい彼女とよろしくやっているのに、サリーの新しい恋人を見て嫉妬もしている。
要するにヴィンセントはまだサリーに未練があるわけだ。それでいてオリヴィアとも上手くやろうとしている。
おいおい、それ自分勝手すぎるだろ。
随所随所でヴィンセントの回想が挟み込まれる。
まだ学生だった彼がサリーと出会う場面、サリーの家族と初めて対面する場面、結婚当初の浮き立っていた場面、2人の思いが次第にすれ違っていく場面・・・。
そして一方でオリヴィアとの出会いや再開の場面・・・。
女性の観客は、男はこれだからなあ、とその都合よさに呆れるのではないだろうか。
優柔不断男のヴィンセントだが、にやけ顔のリチャード・ギア(!)なのでこの配役は好かったのではないだろうか。
問題はシャロン・ストーン。きりっとしたビジネスウーマンで男女関係にも毅然としているという役柄。
でも彼女はなんといっても”氷の微笑”の悪女のイメージだからなあ。
愛人役のほうを演じていたらどうだっただろうか。
ちなみに、シャロン・ストーンはこのサリー役でラジー賞の最低女優賞をとっている。
(以下、ネタバレ。ここからがちょっと捻ってくるのだよ)
ついに意を決したヴィンセントはオリヴィアへ別れの手紙を書く。
しかし優柔不断男のヴィンセント。手紙を書いたものの今度はそれをなかなか投函できない。
そんなときに彼は朝の牛乳配達を手伝う赤毛の小さな少女と会う。
と、少女にオリヴィアの面影を見た彼は、別れを告げた手紙を書いたことなどどこへやら、オリヴィアの留守番電話に激しい愛の告白を吹き込む。
別れを告げようとした手紙はポケットに入れたままだよ。
なんという変わり身の速さだ。
それから彼女に会うために田舎道で車を飛ばすのだ。
そして冒頭のヴィンセントの事故の場面となるわけだ。
救急搬送されたものの彼は死亡する。
それぞれ知らせを受けて病院に駆けつけるサリーとオリヴィア。
サリーは彼の遺品の中にオリヴィアへの別れを告げた手紙を見つける
一方のオリヴィアは留守番電話に吹きこまれていた愛の告白を聞いていた。
サリーは愛人とは別れるつもりだったのねと思い、オリヴィアはあんなに激しく愛の告白をしてくれていたんだわと思う。
煮え切らない優男のヴィンセントだったが、最後は2人にそれぞれ自分が選ばれたという思いをさせたという事になる。
それも煮え切らなさ故の結果という皮肉なものだったわけだ。
きっとこの映画は男性と女性では感想が違ってくるだろう。
そして男性の間でも、浮気経験の有無などで共感度が違ってくるのではないだろうか。
えっ、私はどうかって? そりゃあ、あれだよ・・・。