
2025年 175分 日本
監督:李相日
出演:吉沢亮、 横浜流星
歌舞伎に人生を賭けた男の物語。 ★★★
とにかくこの映画、評判が半端ではない。
今年の邦画の賞を総なめするのではという予想がすでに立てられているようだ。
そんなにすごいのであれば、やはり観ておかねばなるまいて。
原作は吉田修一の同名小説。
監督は「悪人」や「怒り」でも吉田修一の小説を映画化している李相日。
これまでの李監督作も吉田の小説世界を巧みに映像化していて、見応えのあるものだった。
物語はもう至るところで紹介されているので、映画を観ていない人でもおおよそは知っているのではないだろうか。
任侠の家に生まれながらも、その天賦の才能から歌舞伎役者としての道に人生を捧げた男・喜久雄(吉沢亮)のドラマである。
もう一人の主人公が歌舞伎役者の家に生まれた俊介(横山流星)である。
男性二人がその才能から女形の極みを目指す、とくれば、やはり「覇王別姫」を思い浮かべる人は多いだろう。
李監督も当然あの映画のことは意識したとなにかの会見で話していた。
しかしあの映画は男性主役二人に女性1人が絡んでくる愛の物語だった。
今作にはその要素はほとんどなかった。
ただただ芸の道を究める、それに一生をかけた男たちの物語だった。
才能を見込まれて途中から歌舞伎の世界に参入した形の喜久雄と、幼い頃から花井半二郎の跡取りと目されてきた息子の俊介。
もちろん二人には対抗意識もあるのだが、その心理的関係がいささかきれいすぎるきらいはあった。
それにしても、多くの感想で言われているように、主役二人の歌舞伎芝居は見事なものだった。
ものすごい練習をしたのだろうな思わされる。
映画の登場人物の二人は、歌舞伎の女形としての芸のために必死である。そしてその役を演じる二人は映画の役作りのために必死なのだった。
その必死さには通じるものがあるのだろう。それが映画を深みのあるものにしていた。
歌舞伎の演目について少しなりと知識があればよりもっと映画を楽しめたのではないだろうか。
(原作文庫本の解説にはそれらの演目の簡単な説明が載っていたが・・・。)
しっかりと作られた傑作であった。
基本的に揺るぎがないので、文句の付けようがなかった。
この映画が本年の我が国の映画賞を総取りしても納得する人が多いのではないだろうか。