あきりんの映画生活

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「ドライブ・イン・マンハッタン」 (2023年) あんたが悲しそうだからこんなことを言うんだよ

2023年 100分 アメリカ 
監督:クリスティ・ホール
出演:ショーン・ペン、 ダコタ・ジョンソン

タクシーの中の会話劇。 ★★★

 

夜、ジョン・F・ケネディ空港から1人の女性客(ダコダ・ジョンソン)がタクシーに乗り込む。
初老の運転手(ショーン・ペン)は当たり障りのない会話をはじめる。
だれかとのラインをしている彼女も次第に会話にうち解けてくる。

 

という具合に、お互いを探るような会話で始まる始まる本作は、夜中のタクシー内を舞台にした2人だけの会話劇。
動きも少なく、二人の顔のアップが画面のほとんどであるのだが、会話にはリアルな緊張感があり、ついつい観てしまう雰囲気を持っていた。

 

タクシーの車内を舞台にした映画と言えば、ジム・ジャームッシュ監督「ナイト・オン・ザ・プラネット」が思い浮かぶ。これはオムニバス映画で、いろいろな人生の断面を軽妙に見せていた。
1台のタクシーの中だけの映画としては「パリタクシー」があった。原題は「好い旅路」といったところで、ほのぼの系だった(日本のリメイク作で「東京タクシー」というのもあったが、これは未見)。

 

さて。
初老の運転手はかなりズケズケものをいう。ちょっと悪趣味で、口も悪い。
2度の結婚を経験していて、若い女性相手にもセックスに関してのことも臆面もなく語る。
しかしどこか知的で思慮深い感じもある。
そんな運転手を演じてショーンペンが上手い。さすがにアカデミー賞2回の受賞者である。

 

一方の女性はプログラマーとして自立しているのだが、そんな彼女の恋人が既婚者であることを運転手に見抜かれてしまう。
このあたりから二人の会話はかなり深い個人的な部分に入りこんでいく。

 

タクシーの中ではそれまで何の接点もなかった人生が出会うわけだ。
それぞれが自分の人生を語っても、それはその乗車時間だけでの付き合いであり、客がタクシーを降りた時点でその接点は失われる。
それだけに、その後の人生への影響や人間関係への遠慮などを振り捨てた語らいができるわけだ。

 

ダコタ・ジョンソンが好かった。
調べてみると、両親はメラニーグリフィスとドンジョンソン、祖母がティッピー・へドレンとのこと。
芸能一家の血筋だったんだ。もちろんビジュアルも好みですよ(笑)。

 

それにしても、ラインの向こうにいる彼女の既婚者恋人は何なんだ!
絶対に身体目当てのスケベド変態じゃないか! 悪いことは言わないから、あんな奴とはすぐに別れなよ!
ま、それはさておき。

 

高速道路を降り、目的地に近づいてきた頃に女性客がある(辛い)告白をはじめる。
ここから一気に感情が昂ぶっていく。
告白を聞いている運転手も言葉を失い、目に涙がにじんできている。

 

おそらくは、もう二度と会うことがない相手だからこそ、彼女は自分の中だけに秘めておこうとした事柄を語ったのだろう。
そして彼女はそれを語ることによって救われた何かがあったのだろう。

 

タクシーは女性客の目的地に着く。
二人にはもうこれからの接点がないことはわかっている。
同じように、観客もこの後の彼女の人生に触れることはできないわけで、それが映画の余韻となっていた。
好い映画でした。