あきりんの映画生活

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「悪なき殺人」 (2019年) 関係の連鎖が・・・

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2019年 フランス 119分
監督:ドミニク・モーレ

偶然か必然か。 ★★★★

 

離れた場所で、まったく別の人生を送っていた人たちが、不思議な縁で繋がっていく。
思いもよらなかったような関係が生じてきて、その人の運命を狂わせる。
それは偶然だった? それとも必然のことだった?

 

まずは、フランスの田舎村に暮らす社会福祉士のアリス。彼女は、孤独で人嫌いなジョゼフと不倫をしていた。
そのアリスの夫のミシェルは、なにやらインターネットの出会い系サイトで知り合った女性アマンディーヌに熱をあげている。
村はずれの雪道では、エヴリーヌという裕福な女性の車が乗りすてられていた。彼女はどこに行った?

 

この映画は章立てで、それぞれの登場人物の視点でその時何があったのかをみせていく。次の章はジョゼフ。
彼は家の近くで毛布にくるまれたエヴリーヌの死体を発見する。そして・・・。

 

その次はパリのレストランで働くマリオンの章。
マリオンはエヴリーヌと同性愛の関係で、彼女を追って別荘のある田舎村へやってくる。
ヒッチハイクをしようとして合図をした車にはミシェルとアリス夫妻が乗っていたのだが・・・。
マリオンはロッジに宿泊することにしたのだが、そこに不気味な男が訪ねてきたり、わけの判らないお金が置いてあったり。

 

そしてフランスから5000kmも離れたアフリカ・コートジボワールで一攫千金を夢見て詐欺をしている若者アルマン。
そして。そしてミシェルがあこがれ続けている謎の女アマンディーヌ…。
殺されたエヴリーヌとは何の接点もないこれらの人々の運命が、偶然にも絡まり合っていく。

 

章が変わり、主人公が交代すると、見えていたものが別の意味のことになってくる。
見ている人物が変わると、それまで見えていた事象の意味が変化するのだ。
そして章を追うたびに、なんでもなかったような様々な出来事が えっ?そうだったのか! と繋がっていく。

 

アリスが訪ねたときにジョゼフの愛犬は、何故死んでいた?
車の中から初めてマリオンを見たミシェルは、何故あんなに慌てた?
ミシェルを騙していたアルマンのもとに、何故架空の女性に会ったようなミシェルのメールが届いた?
ああ、そうだったのか。あんな風に見えていてあの人はあんな風に思ったのだけれど、実はこういうことで、この人はこんな事を考えて行動していたんだ・・・。

 

とにかくこの映画はよく練られた脚本で成り立っていた。
お見事!
フランス版コーエン兄弟映画、といった感じでもあるが、もっとお洒落な雰囲気がある。
前半でばらばらに見えていた事柄が、後半では見事に繋がっていくのは、とても快感だった。

 

最後の最後まで皮肉も効いていて、そんなぁ!、それ偶然かよ! と叫びたくなります。
お勧めの作品です。