あきりんの映画生活

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テープ (2001年)

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2001年 アメリカ 87分
監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク、 ロバート・ショーン・レナード、 ユマ・サーマン

一室内での心理劇。 ★★

一度観たら絶対に忘れない映画。
登場人物は正味3人だけ。舞台は安モーテルの室内だけ。

これだけで映画を作るのだから、求められるのは脚本の巧みさと出演者の演技の妙である。
結論から言えば、1時間半足らずという上映時間の短さもあるのだが、最後まで引き込まれて観てしまった。大したものだ。

ヤクの売人をしているようなチンピラのヴィンセント(イーサン・ホーク)が泊まっているモーテルの部屋へ、今は映画監督となっているジョン(ロバート・ショーン・レナード)が訪ねてくるところから話は始まる。
二人は高校の元同級生だったようだ。

デジタルカメラで撮影されたとのことで、画像はとても粗い。
しかし、そこが一室内という閉塞状況で展開されるドラマには、かえってよく合っていた。
会話をする二人の間をカメラが揺れ動く、揺れ動く。暴力的ですらある。

しばらくはたわいのない話をしていた二人だが、やがてヴィンセントはかっての日に起こったある事件についてジョンを問いつめ始める。
記憶を掘り起こされるジョン。告白と懺悔をさせられるジョン。

ヴィンセントは人をねちねちと苛めて快感を覚えているような小悪党。
それに対して、ジョンは善人であろうとして自分にまで偽りを強いるような、ある意味での小心者。
二人のやりとりは、観ている方がやりきれなくなるぐらいに上手い。
部屋は狭いし、汚いし、胡散臭い男が二人で延々とあーだこーだとやるのだから、もう、この閉塞感は逃げ出したくなるぞ。

そこへ事件の当事者のエイミー(ユマ・サーマン)もやって来る。今は地方検事補になっている彼女も、ヴィンセントに呼び出されていたのだ。
3人の腹のさぐり合い、そして3人の記憶が交叉して、次第に事件の本質が露わになっていく。
ただ、その事件に対する3人の思いが微妙に、そして決定的にずれているのだ。

見終わっても気分が晴れ晴れするような映画ではない。
普段はそっとしまっておきたいような人間心理の嫌な面が、これでもかと露わにされる感じがある。
ただそれがこの映画の狙いであるだろうし、成功しているわけだ。

ちなみに、タイトルの録音テープは、それほど重要な役割を果たすわけではありません。ただの小道具の一つです。
テープの録音内容が謎を解明するのか、といった過剰な期待をしないように。