2008年 スペイン 96分
監督:ウディ・アレン
出演:スカーレット・ヨハンセン、 レベッカ・ホール、
ペネロペ・クルス、 ハビエル・パルデム
スペインの夏、愛のむき出し。 ★★★
どちらかといえばウディ・アレンは苦手な方(でも、ストーリーを作るのは上手いよなあといつも感心)。
この作品は、ペネロペとハビエル・バルデムが結婚したとのことで、その記念に鑑賞。
バカンスを楽しみにバルセロナにやってきた親友同士のヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンセン)は、色男の画家アントニオ(ハビエル・パルデム)と知り合う。
邦題から、勝手に軽い感じのラブ・コメかと思って見はじめたのだが、どっこい、濃い内容の愛憎ものだった。
婚約者のいる真面目なヴィッキーと、恋をしたくてたまらないクリスティーナは、ふたりともアントニオに惹かれてしまう。
このアントニオ、言葉巧みに二人をその気にさせていくのだが、おいおい、女性ってまさかこんな程度の殺し文句でなびいてしまうの?
このあたりまでは、スペインの風景も美しく、軽い恋愛ゲームの様相。
しかし、そこへ突然アントニオの元妻マリア(ペネロペ・クルス)があらわれて事態は一変する。ここからが断然面白くなる。
彼女は、かってはアントニオをナイフで刺したこともあるし、今度は自殺未遂をした。
恋なのか、愛なのか、憎しみなのか、激情家マリアの存在が4人の運命を激しく揺り動かす。
マリアの人物像がすごい。
天才的な芸術家(アントニオも、自分の絵はマリアの影響を受けていると自ら認めるほどの才能を持っている)で、それゆえにか、自分の感情を制御できないような性格。
愛に対しても破滅的に突き進むようなところがある。
なるほどと思ったのは、すでに同棲していたアントニオとクリスティーナの間にマリアが割り込んでくるのだが、三人で生活することによってお互いの感情が安定するところ。
一人の男を中にして二人の女性が好い関係を作るなんて、そんな馬鹿な、と思うところだが、嫉妬なんてのは些細な感情であって、もっと本質的な感情があるのだ、ということをなんとなく納得させられてしまう。
ウディ・アレンのことだから、ヨハンセンを主役に撮ったつもりの映画なのだろうが、一番印象的だったのはなんと言ってもマリアを演じたペネロペだった。
マリアのような女性に近づいたら、火傷をするか、切り傷を作ってしまうか、とにかくただではすまないだろう。それなのに惹きつけられてしまうという魅力を持っていた。
ウディ・アレンは、ちょっと妙な、世間常識からはずれたような魅力を持った女性を撮るのが上手い。
バカンスが終わり、ヴィッキーとクリスティーナはNYに戻っていき、映画は終わる。
映画は終わるのだが、二人が去ったあと、バルセロナに残されたマリアとアントニオはあれからどうしたのだろうか。
映画が終わったところから始まる物語も、あるわけだ。