監督:園子温
出演:吹越満、 でんでん、 黒沢あすか、 神楽坂恵
暴力的映画。 ★★★★
ものすごい映画を観てしまった。
思春期の娘と若い後妻の関係がこじれてはいるものの、曲がりなりにも普通の市民生活をおくっていた人物が、後戻りのできない人生に引きずり込まれていく。
監督は「愛のむきだし」の園子温。
実際に埼玉県で起こった愛犬家連続殺人事件をもとにしているとのことだが、映画の舞台は静岡県で、熱帯魚店経営者が登場人物となっている。
グレ気味だった娘が万引で捕まったことをきっかけに、小さな熱帯魚屋を経営する社本（吹越満）は、愛想のいい熱帯魚店オーナーの村田（でんでん）と知り合う。
面倒見のいい好人物に見えた村田だったのだが、社本はその巧みな弁舌に次第に翻弄されていく。
この衝撃は、韓国映画「オールド・ボーイ」に通じるものがあった。
圧倒的に暴力的な映画なのだ。
もちろん暴力的な場面も出てくるのだが、なによりも気持ちが暴力的なのだ。
こちらが身構える暇も与えずに、がんがんと気持ちを殴りつけてくる、蹴とばしてくる。
でんでんという役者は初めて観たが、怖ろしい悪人をすばらしく演じていた。
相手を猫なで声でおだてたかと思うと、次の瞬間には居丈高に脅す。その豹変ぶりに普通の人だったら呑み込まれてしまうだろう。
見ているものは気の弱い主人公の視点で映画を観てしまう。
自分があの立場に置かれたら、やはり同じような道筋をたどってしまうのではないかと思わせられる。恐ろしいことだ。
村田と社本の奥さんが、それぞれに妙に艶めかしい。
常軌を逸した悪人・村田の奥さん役が黒沢あすかなのだが、こちらも村田を手伝って平気で死体を切り刻む様な人物。
黒沢あすかは、塚本晋也監督の「六月の蛇」でも体当たりの好演技を見せていた。
グロい場面も容赦なく出てくる。とても笑えないようなブラック・ユーモアもふんだんに出てくる。
尋常な映画ではない。
それなのに物語に引きこまれて観てしまう。すごい映画だった。
圧倒的な迫力を持つ作品。激しく印象的。
しかし、もう一度観るかと言われたら、激しく拒否。
