あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。1800本余りの映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。

「メランコリック」 (2018年)

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2018年 日本 114分
監督:田中征彌

裏のお仕事映画。 ★★★☆

 

説明記事によれば、この映画は「撮影期間10日間、予算300万円、出演は無名俳優たち」とのこと。
しかし、とても面白い作品だった。
映画の面白さは、かけたお金ではないんだということを再確認。
東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門というので監督賞を受賞していた。

 

主人公は、東大を卒業したのにニート暮らしをしている和彦。
どうも他人との交流が不得手のようで、小声でぼそぼそとしゃべる暗い雰囲気の青年。
そんな彼が偶然に行った銭湯で高校の同級生・百合と再会する。
彼女は何故か和彦に好意的で、ごくごく自然にアプローチしてくる。

で、なんとなくその銭湯でアルバイトをすることになる和彦。


一緒にアルバイトをすることになったのが金髪のチャラい感じの松本くん。
根は悪い奴ではなさそうなのだが、どこまでも軽そうな奴。
対人関係に無頓着な和彦は、そんなことにも余り気を使わない。松本くんも人なつこいし。
根暗の和彦とチャラ男の松本くん。絶妙のコンビ。

 

ところが実は、その銭湯は深夜に“人を殺す場所”、”死体を処理する場所”として使われていたのだ。
えっ!? まさかそんなことを! と思うところのだが・・・。
和彦も乞われるままに、血で汚れた浴場を掃除し、大きな風呂釜での焼却処理を手伝うようになる。
これ、めちゃくちゃ異常でエグいことなのに、和彦は淡々とその事態を受け入れている。

 

そうなのだ、とてつもなくエグいことが起きているのに、それとは裏腹に軽い感じで物語が進んでいく。
この奇妙なアンバランスな感じがとても面白い。
疲れたろうから入っていくか、と銭湯のおやじの東に言われて、死体を処理し終わったばかりの浴場で気持ちよさそうに湯に浸かる和彦と松本くん。
おいおい、それ、並の神経じゃないだろう(汗)。

 

風呂場での死体処理というと思い出すのは、園子温監督のあの「冷たい熱帯魚」。
しかしこちらは銭湯なので、ずっと広々としている。
遺体は大きな風呂釜で燃やしてしまっているし、風呂場も大きくて広いと、何かと便利なのだ。
いや、そういうことではないのだが(汗)。

 

和彦のキャラが立っている。
大真面目なのだが、どこかネジがずれているのだ。
銭湯のオヤジの東が、死体処理を松本くんひとりに任すと、なんだか仲間はずれにされたようでムッとしたりする。
自分も仕事が出来るのだからもっと任せて欲しい(仕事の内容が問題ではあるのだが)、というあたりが可笑しい。

 

そして、浴場の後始末で違法な臨時収入をもらうと、単純に奇妙に浮かれたりする。
東さんと松本くんがこそこそとなにごとかの相談をしていると、また仲間外れにされたと思って拗ねてみたりもする。
う~ん、事態の異常さと、まともすぎる小心人間のギャップが可笑しいのだ。

 

さて、殺し業務を請け負っていた男がヤクザ事務所を襲うときに、手伝いに松本くんを連れて行く。
はたして松本くん。大丈夫なのかと思っていたら、彼は驚くほどにやるのである。
すっかり松本くんを見直してしまったぞ。

 

実は松本くんはプロの殺し屋だったのだ。
そうか、ただのチャラ男ではなかったんだ。松本くんは頼りになる奴だったのだ。

 

とにかく和彦や松本くんは、殺人を引きうけたり、その死体処理をしたりと、やっていることは極悪非道。
それなのに、映画にはどこか妙なのんびり感があって、すっかり主人公たちに感情移入してしまう。
恋人役の百合もリアル感があって好かった。彼女の存在が物語に彩りを添えていた。

 

どんどんと深みに引きずりこまれていく和彦と松本くん。
どんな風に物語が着地するのかと思っていたら、まさかのほっこりだった。
そこにかぶる主人公の独白は、「人生には何度か、一生これが続けばいいのにと思える瞬間が訪れる。その瞬間の為だけに生きている。それで充分」

 

なるほどなあ。映画を見終わった私も同じ気分になっているか・・・。
それにしても、松本くんやヤクザの情婦だったアンジェラちゃんのこれからのことが気になるなあ。

 

インディーズ映画で大化けをしたといえば「カメラを止めるな」が思い浮かぶ。
個人的には、あれよりも今作の方が出来がよかったという評価です。