1928年 フランス 17分
監督:ルイス・ブリュニエル
シュルレアリスム映画の傑作。 ★★★★★
今から80年あまり前に作られた17分のモノクロ映画。もちろんサイレントである。
なんとかもう一度観たいものだと永年思っていた作品だった。
先日、新国立美術館で開催されていた「シュルレアリスム展」に行ってみると、なんと会場で上映されていた。嬉しい。
カミソリを研いでいた散髪屋が美女の眼球にカミソリをあて、真横に引くとどろりと水晶体が流れ出す。
初めて観た人が卒倒するのではないかというほどの、あのあまりにも有名な場面が冒頭にある。
脚本はサルバドール・ダリとブリュニエルの共同。すごい。
シュルレアリスムであるから、ストーリーなどとは無縁である。
夢と同じように無意識下に収められていたものをなんとか取り出そうとしているのだろう。
夢は視覚的なものとして訪れてくる。
だから、極端な言い方をすれば、不安とか絶望ととか、安堵とか希望とか、とにかくそういった抽象的ともいえる主観的な感覚が、常識的ではない視覚的なものとして表現されてくる。
だから、そこには理屈はない。
この映画も、心の中では抽象的なものとして存在している感情を、なんとか具象的な映像であらわすことを試みているのだろう。
だから、やはり理屈はない。
だからこの映画は、全く受け付けない人と、とても魅力を感じる人に分かれるだろう。
なにしろ、何かを求めるように動く手には無数のアリが這いずり回っていたり、街中のホテルのような部屋の扉を開けると、そこには海岸が広がっていたりする。
マグリットの絵を思わせるような展開である。
素晴らしく面白い。
美術展の売店ではこの映画のDVDを販売していた。
もちろん即購入してきた。
ああ、嬉しい。