1998年 アメリカ 117分
監督:コーエン兄弟
出演:ジェフ・ブリッジス、 ジョン・グッドマン、 スティーヴ・ブシェミ
ジュリアン・ムーア、 フィリップ・シーモア・ホフマン
ブラック・ユーモアなサスペンスもの? ★★★
例によってコーエン兄弟が皮肉に描き出す人間ドラマ。
例によって登場人物たちはおろかというか、お粗末というか、哀れというか、見ている者は苦笑いするしかない。
お気楽な失業男デュード(ジェフ・ブリッジズ)の本名はリボウスキ。
実は同姓同名の大金持ちの老人がいた。しかも、その大金持ちの若い後妻はふしだらで浪費家。危ない筋からの多額の借金を抱えていた。
で、その危ない筋のチンピラが奥さんの借金を取り立てようと、人間違いをしてデュードのところへやってくる。
大金持ちの家と、汚れきったアパートを間違えてやってくる危ない筋のチンピラもいい加減だが、そこからのデュードの行動もいい加減。
そこからあれよあれよという(馬鹿馬鹿しい)展開になっていくのは、コーエン兄弟のお得意とするところ。
デュードの生き方のだらしなさ、無頓着さをジェフ・ブリッジスが好演。彼は上手いなあ。
デュードはいつもボーリング(!)3人組でつるんでいるのだが、あとの二人も奇妙な人物像。
ミリタリー・ルックで独り合点でボーリングのことしか頭にないジョン・グッドマン。
いつも「なに?なに?」と口を挟んでは邪魔者扱いされるスティーブ・ブシェミ。
この3人、思惑が外れて一大事な状態になっているのに、とりあえずボーリングするか、が合い言葉。脱力!(笑)
脇役も個性豊か。
大金持ちのほうのリボウスキの秘書がフィリップ・シーモア。
へつらい笑いをしながら本当に困り切っている様子が、なんとも痛い。こういう人っているよなあ。
大金持ちの方のリボウスキの娘がジュリアン・ムーア。
前衛芸術家だということで、綱で身体をぶら下げて絵を描いたりしている。行動がすべてぶっ飛んでいる。ジュリアンも多彩な女優であることよ。
それに、それに、3人組の宿年のボーリング相手にジョン・タトゥーロ。
彼のゲイのはじけっぷりがまた傑作。ほんとに彼らにとってボーリングってなによ?と言いたくなるほどに固執している。
その馬鹿馬鹿しさが皮肉っぽい。
快感をともなうような笑いではなく、苦笑い。あるいは呆れ果てた笑い。
それでいて、決して不快ではない。
コーエン兄弟は、誰もが幾分かは持っている情けない部分を極端にひろげて見せてくる。
だから、情けない人たちなのだけれども、つい苦笑しながら共感してしまう部分がある。
独特のコーエン調ですが、誰でも楽しめるんではないでしょうか。