あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「パリ・ジュテーム」 (2006年)

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2006年 フランス 120分
監督:ガス・ヴァン・サント、 クリストファー・ドイル、 イザベル・コイシュ、
    アルフォンソ・キュアロン、 アレクサンダー・ペインなど
出演:(下記参照)

パリを舞台にしたオムニバス集。 ★★★★

パリには20の区があるとのこと。その中の18の区を舞台にして18人の監督が、それぞれ5分程度の短編を撮っている。

スティーブ・ブシェミは相変わらずの持ち味で楽しませてくれる。
彼はパリへやって来た旅行者なのだが、ひょんなことから若者にからまれて殴られてしまうという役どころ。彼はちょっと情けない無実の被害者がよく似合う。
監督がコーエン兄弟だし、さすがに期待を裏切りませんなあ(「チュイルリー」1区)。

恋人のナタリー・ポートマンから突然別れの電話をもらう盲目の青年の話(「ファブール・サン・ドニ」10区)も印象的だった。
青年が彼女の言葉を聞いたとたんに、二人が過ごした幸せな記憶の風景が走馬燈のように映しだされる。切ない。
でも、・・・。ポートマンが可愛くて、思わず見直してしまったぞ(上の画像です)。

「モンソー公園」17区ではニック・ノルティが頑固親父のような風体で登場する。
疎遠な関係だったような娘から、彼女を困らせている人物への対応を頼まれているようなのだ。
思わぬオチがあり、思わずニヤリとする。こういう物語もいいなあ。

こうしてパリの街をさまよって、そこで人々が繰り広げる人生模様の一コマを切り取って見せてくれる。
自分の子どもは託児所へ預けてベビー・シッターとして働く若い母親や、別れようと思った日に妻が不治の病に罹っていることを知る夫や、長い夫婦生活の終わりを相談する初老の夫婦(ジーナ・ローランズが出ている)などもいる。
どの話に出てくる人々も、それぞれの場面の背後に広がっているその人の長い物語を感じさせてくれる。

幻想的な話しもある。
たとえば、「マドレーヌ界隈」8区は、イライジャ・ウッドとオルガ・キュルレンコ(メーキャップのせいで全く判らなかった)が演じるドラキュラの恋物語であるし、「ヴィクトワール広場」2区では、ジュリエット・ビノシュが亡くなった息子と夜の街で再会する。
ビノシュの哀しさと喜びがひとつになったような表情が印象的だった。

一番心に残ったのは、一人旅行をしている中年婦人のモノローグで描かれる「14区」。
自分の生活はどこにもない見知らぬ街で、自分とは関係のない生活をしている見知らぬ人々の中にいる、そんなときにふっと感じる寂しさと、それなのに感じる無限の開放感。
とても、ああ、そうだなあと思ってしまった。

畏まって観る映画ではなく、人々の人生の断片を垣間見る、そんな映画です。
またパリへ行ってみたくなるけれども、ブシェミみたいな目にあったら嫌だな(笑)。
去年、「ニューヨーク、アイ・ラブ・ユー」というニューヨ-ク編も作られています。