あきりんの映画生活

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「桐島、部活やめるってよ」 (2012年)

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2012年 日本 103分
監督:吉田大八
出演:神木隆之介、 橋本愛

高校部活物語。 ★★★

同名の浅井リョウの連作短編集が原作。
高校生たちの部活を中心に、彼らの人間関係や、それぞれが抱えている思いを同時並行的に描いている。

バレー部のエースだった桐島は人望も厚く、公認のきれいな彼女もいて、学園生活の中心的人物だった。
ところがその桐島が部活を止めたという噂が、突然に学校内に広まっていく。
学園のスターの一大変化に、その親友たちや恋人、部活仲間は驚き、あたふたとする。

見はじめてしばらくは、正直なところ、なんか素人っぽい出演者ばかりで垢抜けていない映画だなあと思っていた。
しかし、そのうちにその素人っぽさが、普通の高校生の表現にはよく合っているような気になってきた。
そして、自分自身のこととしてはもう何十年も前のことだが、ああ、たしかに高校時代ってこういう感じだったなあ、と思えてきた。

映画には、バレー部やバドミントン部、野球部といった運動部、吹奏楽部に映画部といった文化部に所属する生徒たちが登場する。
それに帰宅部と称する部活をしていない生徒たち。
登場人物は多いのだが、名前は覚えられないものの、すぐに人間関係がわかってくるのは、彼らが上手く描きわけられているからだろう。

他の高校がどうなのかは知らないのだが、私の高校の部活では、なんとなく運動部が花形で、その中心選手は生徒の中でも皆から一目置かれていた。
それにひきかえ文化部はなんとなくランクが下のようなイメージがあった。
特に私が在籍していた文芸部などというのは、暗い部室にひっそりと集まって他の者にはまったく意味をなさないようなことをぼそぼそと議論していた。
まるで、この映画の映画部のよう(笑)。
でも楽しかった。あの部活があったからこそ今の私がある(な~んちゃって 苦笑)

桐島の彼女を中心にした女の子4人組がいる。
桐島の彼女もお高くとまっている感じだったが、その彼女のご機嫌を取っているような、なんとなく嫌~な感じの子もいた。
その嫌~な感じの子の彼氏に片思いしている吹奏部の女子部長は、切ないほどの一途さだった。
で、部活、親友関係と同時に、彼らの淡い恋愛感情も映画にあふれている。

こうして高校生の日常生活を多面的に描いているのだが、この物語の巧みなところは、桐島という人物を要に持ってきて、登場人物たちを関連づけているところ。
そのためにひとりひとりを描きながらも、物語全体が散漫にならない。

しかも、その肝心の桐島は、最後まで映画に登場することはない。
いつまでも現れない”ゴドー”のようなのだ。不在のままなのだ。ここも上手い。

(余談)
朝倉かすみの小説に「田村はまだか」というのがある。
小学校のクラス会に遅刻している田村を待ちながら、5人の男女がそれぞれの思い出話をする、という設定。
で、それにしても田村はまだか、と言われ続ける田村は果たして現れるのか?

この映画、特にどうということを描いているのではない。
しかし、なんとなく伝わってくる雰囲気があって、なんとなく、わかる、わかる、と言いたくなるものを持っている映画。

作中の映画部の部長(神木隆之介)は夢を訊かれて、アカデミー賞なんかとてもとても、と照れて答えていたけれど、吉田大八監督、やるじゃないですか。
高校時代はやっぱり映画部だったのかな?