1966年 日本 150分
監督:山本薩夫
出演:田宮二郎、 東野英治郎、 小川真由美、 小沢栄太郎、 石山健二郎
大学病院の教授争い。 ★★★☆
大学の医学部を”白い巨塔”というようになったほどの記念碑的作品。名作。
原作は山崎豊子。脚本が橋本忍。そして山本薩夫監督。この3者の顔合わせなので、素晴らしい構成力で撮られている。
2時間半の長尺だが飽きることはなく、つい見入ってしまう面白さだった。
浪速大学第一外科の次期教授争いがメインの物語。
その次期教授を狙う野心家助教授の財前五郎に田宮二郎。
手術の腕は良く、マスコミにも大々的に取り上げられるほどの人気ぶりなのだが、それがかえって現・東教授(東野英治郎)には不満。
そこで彼は出身大学である東都大学閥から次期教授を招聘しようと画策する。
映画のはじめに、これは架空の物語ですという意のテロップが出たが、浪速大学が大阪大学であることは周知の事実だった。
もちろん東都大学は東京大学のことである。
医局の中での序列関係、大学内の各科の勢力争い、大学派閥の絡み合い、大学と医師会の馴れ合い、そんなものが見事に描かれている。
教授選考というのは、各科の教授が公平に持っている1票の多数決で決まる。
それゆえに、その1票をなんとか自分の陣営に取り込もうと、裏での思惑、駆け引き、などがどろどろとはじまるわけだ。
こういう古い映画(!)だと懐かしい顔ぶれを見ることができるのも、意外に楽しい。
愛人役の小川真由美が妖艶でいながら可愛い悪女を演じていた。
彼女はこんなに魅力的だったっけ?
財前五郎の義父に石山健二郎。
この人物が生きている。産婦人科の開業医で、見栄も体裁も気にしない俗物で金持ちというアクの強い人物像。
何かあるごとに、金はなんぼいるんや?と、すべての事態をお金で解決しようとする。
娘婿である財前五郎の教授選の票を集めるためにもお金を容赦なくばらまくという戦法をとる。
ここまで割り切られてしまうと、帰って憎めない人物像となる(苦笑)。
財前五郎はなんとか教授選に勝つことができたのだが、その一方で起こしていた医療過誤で訴訟を起こされてしまう。
この医療訴訟については、原作小説ではまた詳しく書かれているのだが、映画制作の時点ではまだその途中だったようだ。
そこで映画ではやや短く切り詰めた感がある。
裁判場面での、医療鑑定人である東都大学教授役の滝沢修は迫力があった。
その陳述は、財前五郎はたしかに術前の検査を怠り、また術後の癌性肋膜炎を誤診した。しかし、それらは患者の予後に影響をもたらすものではなかった、というもの。
なるほど、大学病院が裁判には負けないようにしながら、教授選での敵であった財前五郎にはきっちりと苦言を呈しているわけだ。
最後の場面は、かっての大学病院の象徴であったような教授の総回診風景。
教授を中心に、助教授(今の准教授)や講師などが並び、病棟医長と総婦長(今の総師長)が案内役。後の方には医局員がぞろぞろと続いている。
大名行列と言っていたものだった。
今はこんなことをしている大学病院はないのだろうなあ。
財前五郎と言えば田宮二郎というぐらいに適役だった彼だが、TVドラマでの続編を撮った後に44歳で自死している。
惜しい役者だった。
そういえば「タイム・イズ・ショック」というTV番組の司会もしていたなあ。