あきりんの映画生活

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「ポンヌフの恋人」 (1991年)

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1991年 フランス 125分
監督:レオン・カラックス
出演:ジュリエット。ビノシュ、 ドニ・ラバン

社会の底辺での恋。 ★★★

ポンヌフというのはセーヌ川にかかる橋の名前。
主人公は、工事中で閉鎖されているポンヌフ橋で暮らすホームレスの大道芸人アレックス(ドニ・ラバン)と、そこへ迷い込んできた画学生の家出娘ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)。
ミシェルは失恋したばかりで、しかも不治の病のために視力を失いつつあった。

カラックス監督は、ポンヌフ橋を実物と寸分違わずセットを作ってしまったという。
そのための資金難で、映画は幾度となく撮影中断にもなったという。
いつまでも完成しないために、一部では呪われた映画とも言われていたようだ。

人生に絶望したようなミシェルと、他人を遠ざけるように生きてきたアレックスとの間に、しだいに親密な感情が生まれる。
しかし、これは単純に恋と呼んでいいものなのだろうか。
アレックスは確かに恋しているようなのだが、一方のミシェルはどうなのかな?

映画は主人公の二人と、同じポンヌフ橋に生活するホームレスの老人と、その3人しか登場しない。
徹頭徹尾、アレックスとミシェルをカメラは追い続ける。二人の気持ちの揺れを追い続ける。
二人の背景にはパリの街並み。

ミシェルは、失われつつある視力でアレックスの似顔絵を描いたりもする。
ちょうどパリはフランス革命200年祭で、それを祝う花火や音楽が乱れ交う。
ポンヌフ橋をシルエットにして次々と打ち上がる花火の場面は、実に華麗。

(以下、後半の筋に触れます)

ところが、ある日、アレックスは街のいたるところに張られたポスターを目にする。
それは、ミシェルの目が治る治療法が見つかった、治療が間に合う内に早く家に戻ってこい、というもの。
ミシェルを失いたくないアレックスは、なんと、そのポスターに次々に火をつけて燃やしてしまおうとする。
おいおいアレックスよ、お前はミシェルのことを思いやってはやらないのか(汗)。

ところが、ラジオからも同じ呼びかけがされていて、それを聞いたミシェルは(あっさりと)アレックスの元からいなくなってしまう。
おいおい、ミシェルよ、お前の気持ちは絶望から逃れるためだけのものだったのか(汗)。

視力を回復したミシェルは、ある日、アレックスに会いに来る。
再開したものの諍いを起こした二人はセーヌ川に落ちてしまう。そして・・・。

セーヌ川を行く船の舳先で、二人は身を乗り出すようにして川を眺める。
ミシェルが船の舳先で両手を広げて風を受けている。背後からアレックスがミシェルを支えている。・・・どこかで見た構図。
そう、この場面はあの有名な「タイタニック」のシーンの元になっているともいわれている。

そして、「まどろめ、パリ」というセリフが流れて映画は終わっていく。
アレックスはともかく、ミシェルにはなかなか単純には感情移入がしにくいように作られている。
そのあたりが、この映画を単純な恋愛ものにはしていない所以でしょう。