2008年 イギリス 93分
監督:ジョエル・ホプキンス
出演:ダスティ・ホフマン、 エマ・トンプソン
大人の恋物語。 ★★☆
外人の年齢は見かけからはなかなか判断しにくい。
この映画のときの実年齢は、ダスティン・ホフマンが71歳、エマ・トンプソン49歳ぐらいのはず。
映画での年齢設定が何歳ぐらいかははっきりしないが、感じとしてはホフマンの役が60歳ぐらい、トンプソンの役が40歳代後半といったところか。
とにかく、そんな熟年の二人の恋物語。
離婚してニューヨークで一人暮らしをしているCM作曲家のハーヴェイ(ダスティン・ホフマン)。
一人娘の結婚式に出席するためにロンドンへやってきたが、最近は不調な仕事のことが気がかりで落ち着かない。
しかも、再婚している元妻は新しい夫と幸せそうで、娘も義父と仲良くやっている。
義理で呼ばれたようなハーヴェイは周りから完全に孤立している。
寂しいぞ、虚しいぞ。
一方のロンドン在住でオールド・ミスのケイト(エマ・トンプソン)。
気むずかしい母親の面倒を見て、人生を諦めて暮らしているような女性。
周りが結婚相手を紹介しようとしても、一向に気は乗らない。
ふん、私はなにも期待しないわ。その方が裏切られることもないし、気楽に生きていけるわ。
そんな二人が空港のバーで出会い、ハーヴェイがニューヨークへ帰るまでの時間を一緒に過ごす。
(これで二人が若ければ、「ビフォア・サンセット」だな 笑)
孤独な人間というものは、何かしらの原因をその人自身が持っているのだと思う。
どこかで妥協しながら他人に合わせながら生きていくよりも、自分の気持ちだけで生きていくことを選んだようなところがあるのだろう。
その代償として、当然のことながら、一人で生きることの寂しさも引きうけなければならないわけだ。
だから、人を好きになるということは、その人のためだったら何かを我慢できるということなのだろう。
我慢すること以上のものが、その人と一緒にいることによって得られるのだろう。
そんな相手に出会えるか、どうか・・・。
さすがにダスティン・ホフマンが上手い。
周りから疎外された中高年者が味わう寂しさが、なんとも上手く伝わってくる。
そしてケイトに出会って新しい自分を見つけていく様が、実に自然体で演じられている。
それにしても、この映画の邦題は酷い。もう少し工夫はできなかったものだろうか。
原題は「ラスト・チャンス・ハーヴェイ」。この直訳の方がよほどマシだと思うのだが。
(映画の中で、ハーヴェイが、これがラスト・チャンスだ、これを逃してなるものか、と決意する場面もある。)
恋物語といっても華やかなところはまったくない。
傍から見ればちょっとイタイようにも見えてしまう初老の二人(失礼!)が、必死に相手を求める様は微笑ましくもある。
地味です。
どちらかといえば背中のあたりが少し肌寒い感じがするほどです。
落ちついた映画です。