監督:セルジオ・カステリット
出演:ペネロペ・クルス、 セルジオ・カステリット
無垢の愛の女、自分勝手な男。 ★★★☆
外科医で美人の妻もいるくせに自分勝手な不倫に走る男。
そんな男にただただ無償の愛を捧げる貧しい女。
ペネロペ・クルスの、決して報われることのない一途な愛し方が、なんとも切ない。
15歳になる娘が交通事故に遭い、生死を賭けた手術の成否を待っているティモーテオ(セリジオ・カステリット)。
彼は窓から見える雨降る中庭に、一人の女性の後ろ姿を見る。
それは彼の心の中の祈りを具現化したような女性、イタリア(ペネロペ・クルス)の姿だった
そこから物語は彼の15年前の回想となる。
裕福な生活をおくり、社会的地位も安定していたティモーテオだったが、どこかに満たされないものがあったようなのだ。
ある日、彼は貧しい街で出会ったイタリアという女性を暴力的に犯してしまう。
彼はなぜか彼女のことが忘れられなくなり、ふたたび会いに行く。
ペネロペ・クルスが貧しい下層階級の女性ということなのだろうが、いやに品のない感じで描かれている。
もちろん美しいのだが、あまり垢抜けてもおらず、歯並びまでもが不揃いに見える。
ペネロペの初期の作品だったのかなあと調べてみると、なんとあのクリスマス映画「ノエル」と同じ年の映画だった。
「ノエル」のペネロペといえば、それはそれは美しい恋人役で、ポール・ウォーカーに嫉妬されまくっていた。
雰囲気からしてまったく違う。女優さんてすごいものだなとあらためて感心。
それにしてもティモーテオの身勝手なこと。
会いたくなったときだけ場末の粗末なイタリアの家を訪ねる。そして彼女を抱く。
こんな身勝手な男は女の敵だ。
それなのに、そんな彼にイタリアは、週に一度でもいいから、いいえ、年に一度でもいいから会いに来て、と告げる。
おお、おお、イタリアのなんて哀れで、可憐なことか。
(以下、後半のネタに触れています)
イタリアが身ごもったことを知ったテイモーテオは、ついに妻と別れてイタリアと一緒に暮らすことを決意する。
しかし、折も折、そのときに妻も妊娠していたのだ。
それを知ったイタリアがとった行動とは、そしてその末に彼女を待っていた運命は・・・。
そして15年が経ち、今、生死を彷徨っているティモーテオの娘は、あのときに妻が身ごもった子だった。
ティモーテオの中ではイタリアの代わりに自分の娘が成長したのかもしれない。
しかし、それはやはり男の身勝手な、自分に都合のいい思い込みというもの。
気丈にふるまっていたイタリアだっただけに、その哀れさがいつまでも尾を引いた。
原作は監督兼主役のカステリットの奥さんが書いた小説「動かないで」。
イタリアではベストセラーになったとのこと。
最近のカステリット監督、ペネロペ・クルス主役の映画「ある愛へと続く旅」も、奥さんの小説の映画化だった。
あちらも激しい悲恋の物語だったな。