あきりんの映画生活

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「ソロモンの偽証」前編 ・ 後編 (2015年)

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2015年 日本 前編:121分 後編:146分
監督:成島出
出演:藤野涼子、 板垣瑞生、 清水尋也

校内裁判もの。 (両方合わせて)★★☆

ご存じ宮部みゆきの原作を前編「事件」、後編「裁判」の2部作にまとめたもの。
雪の朝に中学校の校庭で一人の男子生徒の転落死体が見つかる。
その死の真相を探るために、同級生たちが校内裁判を始める、というのが大きな流れ。

当初は、警察も学校も屋上からの飛び降り自殺と判断する。
しかし、そこへ彼の死は自殺ではなく、不良少年たちの殺人だったとの匿名告発状が届く。
告発はマスコミでも取り上げられ、学校も警察も大弱り。
なんとか自殺と言うことで穏便に事を収めたいぞ。
いや、そんな大人の言うことなんか信用できない。私たち自身で裁判をして真相をつきとめるわ。

この校内裁判という設定に入れるかどうかで、この作品の評価は分かれるだろう。
一般常識としては、生徒が自主的に検事役や弁護士役、陪審員役をやって、まともに裁判風のものが成立するとは思えない。
教師や父兄、さらには刑事までもがその裁判劇に本気でつき合ってくれることは、通常ではありえないだろう。
でも、そこがこの作品の骨子なのだ。

主演はオーディションで選ばれたという藤野涼子
ちょっと蒼井優に似た雰囲気の彼女が、とても好い演技を見せる。
その他の大部分の生徒役もオーディションで選ばれたとのこと。素晴らしいな。

被告となった不良少年たちをはじめとする登場人物たちの生活背景も丁寧に描かれている。
不良少年たちによる苛め事件も、深い関わりを持ってきはじめる。
確かにここまで描くのには、前後2本分の長さが必要だったろうなあ。
(なにしろ原作は単行本3冊、文庫本6冊分だった)

証人の証言など、裁判物としての体裁もよく取られている。
被害者の電話の通話履歴から、死の直前まで彼に電話をかけてきていた人物の存在が明らかになってきたり・・・。

(以下はネタバレ気味)

さて、裁判も大詰めになるにしたがって、・・・あれ?
おいおい、そんな方向に行くのかよ。
第一、彼のその行動、思考が生じてきた経緯がこれまで何も描かれていなかったではないか。
そんなことをいきなり言われても、観ている者としては素直にはついていけないぞ。

ということで、校内裁判という (この作品のウリの) 部分をはずして、純粋なサスペンスものとしてみた場合、明かされた真相には不満だった。
なんだ、そんなことだったのかよ、という気持ちにどうしてもなる。

せっかく校内裁判という関門を乗り越えて観たのに、彼の言う”偽善”だらけで終わってしまった気がするなあ。

(校長の、あの事件以来はこの学校にはいじめは一件も起こっていません、なんて、そりゃ貴方が知らないだけでしょ、と言いたくなったぞ。)