2012年 ドイツ 105分
監督:クリスティアン・ベツォールト
出演:ニーナ・ホス
東ドイツに生きた女性医師のドラマ。 ★★★☆
舞台は、秘密警察が人々を監視し抑圧していた社会主義時代の東ドイツ。
重苦しい雰囲気が人々の生活のすべてにただよっている。
当時は密告制度もあったりして、人々はお互いに疑心暗鬼で接さざるを得ない状況もあったのだろう。
主人公は田舎の小さな病院に左遷されてきたような女医バルバラ(ニーナ・ホス)。
同僚医師や看護師は親切に接してくれるのだが、バルバラはツンツンして煙草ばっかりふかしている。
なにか可愛くないなあ。
バルバラは人とのつながりを拒絶しているようなところがある。
どうやらバルバラは権力ににらまれるようなことをして、そのために左遷もさせられ、当局の監視下に置かれているようなのだ。
監視員たちがやってきては、バルバラの部屋を徹底的に点検していく。
そして女性監視員はバルバラに屈辱的な肉体チェックまでする。
しかし田舎の風景は美しい。
同僚が車で送ってやろうというのを断って、バルバラは病院まの道を自転車で行き来する。
その情景も美しい。映画「灯台守の恋」でもヒロインが自転車で通う場面があったが、実に美しかった。
病院に衰弱しきった少女が運び込まれてくる。
強制労働施設から脱走した少女のようだ。
こんな少女が強制労働させられる社会が、つい30年まで実際にあったのだということにも、あらためて驚かされる。
謎を秘めたようなバルバラで、サスペンス・タッチもある。
主役のニーナ・ホスという女優さんは初めて見たが、冷たい感じがこの役にはよく合っていた。
(以下、ネタバレ気味)
実はバルバラは、西ドイツにいる恋人の元への脱国を計画していたのだ。
しかし、計画実行のその夜に、緊急手術が必要な少年が運び込まれてくる。
どうする? バルバラ。
しかも、あの傷ついたあの少女が、もう施設には戻りたくないといってバルバラに助けを求めてくる。
どうする? バルバラ。
今夜が自分の脱国の実行予定なのだよ。そのために秘かな準備を整えてきたのだよ。
バルバラの選択に重いものを感じてしまう。
ベルリン国際映画祭で監督賞をとっています。