あきりんの映画生活

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「湿地」 (2006年)

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2006年 アイスランド 93分
監督:バルタザール・コルマウクル

北欧ミステリー。 ★★★

ネット上での評価は芳しくはなかったが、いや、なかなか面白かった。
北欧ミステリーらしい、どんよりとした空気感もよかった。
原作は「このミステリーがすごい!」で傑作と評されていたようだ(未読)。

映画は、難病に罹っていた幼女が亡くなっての葬儀の場面から始まる。
時が流れて、現在。アイルランドの湿地帯に建つ家で男性の死体が発見される。
捜査をしていたエーレンデュル刑事は一枚の古いお墓の写真を見つける。
それはあの幼女のお墓で、彼女はレイプ事件の被害者が生んだ娘だったのだ。

北欧の寒くて暗くて重い感じが、景色やそこに暮らす人々から伝わってくる。
作品全体が、それこそ”湿地”のようにじめじめとしている。
しかし、それが北欧ミステリーの持ち味であり、惹かれる点でもある。

物語も暗く、重い。
少女の墓を掘りおこして調べると、遺体には脳がなく、悪性の脳腫瘍で亡くなっていたことがわかる。
そして冒頭で殺されていた被害者が、かつての連続レイプ事件の犯人だったことが判ってくる。
それでは、当時のレイプ事件の被害者を調べなければ・・・。
ね、どこまでも暗く、憂鬱になるような事が少しずつ明らかになってくるでしょ。

(以下、完全ネタバレ)

事件の背後には、遺伝性の脳に腫瘍ができる難病があった。
幼くして亡くなった娘の病気は、実は保因者であるレイプ犯が遺伝させたものだったのだ。
その幼子の異母兄は、自分もまたそのレイプ犯によって産まれてきたことを知ったのだ。
そのレイプ犯が遺伝性の病気を伝えて悲劇が繰り替え去ることを防がなくてはならない…。

そうなのだ、冒頭の殺人事件は、遺伝性の病気の連鎖を断ち切るためのものだった・・・。
そして自分もまたその病気の保因者なのだ・・・。
物語はどこまでも暗く終わっていく。

ツッコミどころはある。
30年も経っていたら土中で脳は変性溶解してどろどろになっているだろうに・・・。
掘りおこそうとする意味が判らんぞ。
それに、ホルマリン漬けになっていた脳の大きさはあれは幼児の脳の大きさじゃないだろ。

しかし、北欧ミステリーには、独得の暗さと閉塞感があって、いつも片田舎のどんよりとした空が広がっているような雰囲気がある。
最近は「特捜部Q」シリーズも観たが、どれもなかなかに面白かった。
ときおり、あの暗さのミステリーをまた観てみたいと思ってしまうのだ。