あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「シルバー・グローブ」 (1987年)

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1987年 ポーランド 160分
監督:アンジェイ・ズラウスキ

破天荒なSFカルト映画。 ★★★★☆

ポスターを見てほしい。この手の平に描かれた眼。
これだけで、他の情報はなにも知らずに観賞決定。こりゃすごいカルト映画に違いない・・・。
で、ホドロフスキー監督の「エル・ポト」を観たときに、すごい才能の持ち主がいるものだ、と感嘆したのだったが、今作を観て、まだまだすごい監督がいるのだな、と思わされた。

この映画、ズラウスキ監督が1977年に膨大な製作費で撮り始めたのだが、ポーランド政府の命令で撮影中止させられたという作品。
そして、その10年後にやっと公開されたという曰く付きのもの。
約1/5の部分は無くなっていたので、その部分は流れるような街の映像にかぶせて音声で説明している。
元のシナリオにあった、本来は撮られる予定だった場面を解説している。

どこかの惑星に不時着して生き延びる4人の宇宙飛行士たち。
やがて一人は亡くなり、女性マルタはビョートルとの子を産み、彼が死んでからはイェジーとの子を産む。
この惑星では子供の成長は早く、子供同士がまた子を産み、人類はどんどんと増えていく。
この展開は、ちょっと考えると、アダムとイブから始まるなにか宗教的なものを感じさせたりもする。
(実際、最後の方では後半の主人公が生きながら手足に釘を打たれて磔にされたりもするのだ。)

背景は海岸であったり、薄暗い洞窟の中あったりと、原始的な、言いかえれば呪術的な雰囲気を持ったものとなっている。
そして台詞がとにかく難解。
まるで哲学書を読んでいる、あるいは詩をそらんじている、そんな内容が延々と続く。
観ている者に何かを伝えてくれるような代物ではない。

映像は青みがかった色彩には乏しいもの。
しかし、その映像は異様な光景にあふれていて、もうそれだけで魅せられる。
映画なのだから映像に力があれば、もうそれだけでもいいではないか、と思わされるほど。

ぼろ切れを何重にもまとったような衣装。顔の奇怪なペイント。
浜辺での、現代舞踏のような槍と刀での戦い(戦いまでも儀式的なのだ)。
ポスターにも使われている眼が描かれた手の平(すべての動作が祈りのようでもある)。

だから台詞の意味を捉えようとはせずに、ただただ映像に流されながら観賞するのが、この映画ではよいのかも知れない。
しかも、この映画の映像は、誰かが記録として収めたもの、という体裁をとっている。
ときに画面に向かって人物が話しかけたりしたりもする。誰かがこの映像を観ているという設定にもなっているようだ。

驚くことに、何の説明もなしに数百年後が経つ。
その惑星へ宇宙飛行士のマレックがやって来ると、彼は救世主として人々に迎えられる。
ずっと昔から彼が訪れることは予言されていたのだというのだ。
これって、やはり宗教的なのだろうな。

奇怪な鳥人間(この造型がチープというか、泥臭いというか、本気で作っているのか?というようなもの)との戦いも起こっている。
なんと市街地での銃撃戦もあったりする。
と思ったかというと、いきなりまた茫漠とした海岸や薄暗い洞窟の中の映像に戻ったりする。
海岸には巨大なストーン・ヘンジのようなものも立っている。

最後は映像がなくなっている部分だったようで、音声で説明されていた。
昏迷の内に終わっていく。

途中で怒って観るのを止めてしまうか、呆気にとられて最後まで観てしまうか。
こんな映画があったのだなあ。