1976年 ソ連 102分
監督:アレクセイ・ゲルマン
つかの間の休暇を描いたモノクロ映画。 ★★★
遺作となった「神々のたそがれ」で打ちのめされた(あれはすごい映画だった!)アレクセイ・ゲルマン監督の初期の作品。
第二次大戦中に、戦場記者ロバーチンが20日間の休暇をもらい、故郷に赴く物語。
40年近く前の作品で、モノクロ。
冒頭は、海岸で談笑していた主人公たちソ連兵が、急に襲ってきたドイツ軍戦闘機の攻撃にさらされる場面。
明日からの休暇がもらえるはずだった中尉が死んだりする。
戦争はこういうものだよと、冷徹に描写している。
休暇が始まったロパーチンは、故郷であるウズベキスタンの都市タシュケント行きの列車に乗る。
列車は満員である。戦時中だからか、人々の身なりは薄汚れていて、とても快適な旅というわけにはいかない雰囲気。暗く重苦しい。
しかも長旅のようなのだ。
後で出てきた会話によると、帰省するだけで5日以上かかったらしい。往復するだけで休暇の半分を使ってしまうわけだ。ソ連の国土は広い。
故郷ではロパーチンにはいろいろとすることがあった。
別居中だった妻との離婚手続きを済ませること、映画の撮影現場を訪れること、など。
彼の戦場手記を原作にした映画が撮られていて、原作者として指示を求められていたのだ。
さらに、工場労働者たちの集会での演説・・・。
彼は結構有名人だったのだ。しかも軍隊では少佐ぐらいの階級のようなのだ。
モノクロの映像で映し出される霧がかかった風景などはとても美しい。
ソ連のこういう映画の映像って、みんなタルコフスキーの影響を受けてるのではないかと思ってしまうのは、うがち過ぎ?
(調べてみると、タルコフスキーの「惑星ソラリス」や「鏡」はすでに撮られていたが、「ノスタルジア」や「サクリファイス」はこの映画の後だった)
閑話休題。
ロパーチンは列車の中で見かけた女性ニーナとも再会する。彼女は撮影現場で衣装係として働いていたのだ。
シングルマザーの彼女とのつかの間の愛。
それぞれに疲れ切っていた二人は癒されていく。
戦場に身を置く兵士もちろんだが、銃後の人々にも保証された明日などないのだ。
未来の何かのために耐えるのではなく、今の求めている気持ちに素直になる、それが戦時下の人々なのだろう。
休暇を切り上げ帰隊せよとの命令を受ける主人公。
ニーナとの、おそらくは永遠の別れ。ロパーチンは戦場を目指してまた列車に乗りこむ。
長い旅を終え、ぬかるみの地を徒歩で進み陣営に向かう。
途中では爆撃にあい、つぎつぎに周りで爆発が起きる映像から、やがて地平線の彼方に消えていく。
ゆったりとした、骨太な描写。決して楽しい映画ではない。
地味で、単調。反戦などというプロパガンダを掲げているわけでもない。
しかし何か存在感はある映画。
こういう映画もたまには観ておかなくてはなあと思わされるような何かを持っています。