2002年 香港 102分
監督:アンドリュー・ラウ
出演:アンディ・ラウ、 トニー・レオン、 アンソニー・ウォン
香港ノワールの新しい時代を作った映画。 ★★★★
香港マフィアの一員であるラウ(アンディ・ラウ)は警察へ潜入する。一方、優秀な警察官であったヤン(トニー・レオン)はマフィアへの潜入を命じられる。偽りの身分の中で二人はそれぞれの組織で重要なポストを与えられていく。
およそ10年後、ヤンからの情報で警察は大がかりな麻薬取引を検挙しようとする。しかし警察の動きもラウによってマフィア側に知らされていた。検挙も取引も失敗に終わり、警察もマフィアも内部にスパイが居ることに気付く。
自分を偽って行動している主役の二人の演技が素晴らしい。特に沈痛な表情のトニー・レオン。
偽りの自分の行為は、はたして本当に偽りなのだろうか、もしかすれば、偽りだと思っているこちらがすでに本当の自分になっているのではないだろうか、という疑念がつきまといはじめるのがわかる。
そんな自分をつなぎ止めているのが、ラウにとってはボスであり、ヤンにとっては上司の警視(アンソニー・ウォン)。
ヤンが警視と連絡を取るために会うのはビルの屋上である。二人の頭上に広がる空の広さが、偽りの身からの束の間の解放感を表しているようだった。
しかも、ヤンの場合は潜入捜査のことは警視しか知らない。警視が居なくなってしまえば、自分は本当にマフィアの一員としてしか存在しなくなる。
そんな潜入捜査のジレンマもひしひしと感じられてくる。
観ている方も、アンディ・ラウは刑事だから実はマフィアだし、トニー・レオンはマフィアだから実は警察だし、と頭の中で考えながら観ている。結構疲れる(笑)。
それにしても、刑事になりきろうとしたラウは、根底ではやはりマフィアだったのだろうか。
「男たちの挽歌」ではまだ泥臭さが残っていた香港ノワールだが、この映画で完全にハリウッドと並んだと思う。
レオナルド・デカプリオとマット・デイモンの「ディパーテッド」(マーティン・スコセッシ監督)は、この映画のハリウッド・リメイク版。