2008年 日本 92分
監督:福間健二
出演:西脇裕美、 石原ユキオ、 東井浩太郎
詩人・福間健二の2作目。 ★★★
母と二人で暮らしていた小川みづき(西脇裕美)だが、母は借金を残したまま死去する。みづきは大学を辞め、青果市場で働きだす。そんなある日に、これまで会ったことのなかった父がヨーロッパから帰ってきたくる。
福間監督は若い頃の数年間を岡山で過ごしているが、その岡山の暑い夏の日々が写しだされる。
出演者も岡山で採用した素人ばかりを起用している。だから演技も台詞もみんな嘘くさい。そんなお芝居を思わせるわざとらしさが、この映画ではひとつの雰囲気を作り上げている。
映画を支えているのは、母を失い、それに代わるように失踪していた父が現れて、自分の存在理由を混乱しながら模索する少女の物語、ということになる。
いくつかの詩が作中で読まれる。サイレント映画のような文字注釈が画面に現れる。
音楽は2つの場面で流れただけで、あとは街の雑踏の音をそのまま拾っている。
なぜ映画を撮りたかったのかという監督の思いが画像をつないでいる。
その一方で、成り立とうとする映画が要求してくる画像がつながろうとする。
この両者が合致するときに、至福の映画が現出する・・・。
福間にとっては、おそらくはっきりした物語は要らなかったのだと思える。
この映画には、1時間半の劇場公開版の他に、2時間を超えるバージョンや、25分のバージョンもあるとのこと。
どこからどこまでが映画であるかという境界はないようだ。その背後に流れるものがどれだけは入り込もうが、それもまた映画なのだろう。
そうして物語は拡散していき、次第に見えなくなっていく。
広く公開された映画ではないが、観る機会があれば、ぜひ。