2007年 日本 120分
監督:犬童一心
出演:松嶋菜々子、 宮本信子、 大沢たかお
母娘のドラマ。 ★★★
原作はさだまさしの同名小説(眉山は徳島市にある山である)。
夫である伊丹十三が亡くなった後、映画界から遠ざかっていた宮本信子が10年ぶりに出演している。
シングル・マザーの龍子(宮本信子)に育てられた咲子(松嶋菜々子)は、母が入院したとの知らせで東京から徳島へ帰省する。
そして医師から母が末期癌であることを告げられる。
この映画のヒロインは一応は咲子なのだが、物語の要は江戸っ子女将気質の龍子の気っぷのよい人間性であり、彼女の若き日の恋である。
妻ある男性を愛した龍子は、咲子を生み、一人で男性の故郷である徳島へ移り住んで一人で咲子を育ててきた。
街のどこからでも見える眉山を愛した男性だと思って。
気丈な母である龍子は、病に倒れながらも娘に頼ろうとはしない。
そんな母との関係に咲子の方は寂しい思いをするし、自分の父親のことを何も教えてくれない母に不満も感じている。
この映画では、徳島の風景と行事が大きく物語を支えている。
街のどこからも見える眉山は、確かに徳島の街の象徴であるし、阿波人形浄瑠璃、そして阿波踊りは全国的にも有名な風物である。
一歩間違えば、徳島の観光宣伝映画となってしまいそうなぐらい(苦笑)。
咲子はやっと知った父の名前と古い東京の住所を手に、父を訪ねる。
お互いに父娘だと知りながら、傍らに(気のよさそうな)奥さんがいるために決定的な言葉を交わすこともできないままに対面が終わる。
この場面は、素の感情を言わない(言えない)がゆえに、一層の情感があって好かった。
死期が迫った龍子を喜ばせようと、車椅子で阿波踊り見物に連れて行く咲子。
そして映画のクライマックスはその阿波踊り。これは壮観だった。
映画では阿波踊りの列を、父の姿を見つけた咲子が横切ったりする。この場面をどうやって撮影したのだろうと思っていた。
なんと、この阿波おどり総踊りの様子は、2,200人の踊り子と観客エキストラ12,000人で本番同様に再現して撮影したとのことだった。
ありゃあ、すごいことをやったんだな。
言ってみれば、感傷的な母娘の葛藤もの、不治の病での肉親との別れもの、です。
しかし、徳島の風物が好い雰囲気を出していて、感傷的な部分があまりはなにつかずに観ることができました。
(余談)
松嶋菜々子と松たか子の見分けが付かないのは、私だけ?(汗)