あきりんの映画生活

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ゴースト・ドッグ

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1999年 アメリカ 116分 
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:フォレスト・ウィテカー

スタイリッシュ・ハードボイルド? ★★★☆

葉隠」を愛読書にする殺し屋ゴースト・ドッグフォレスト・ウィテカー)は、古いビルの屋上で伝書鳩と一緒に暮らしている。かって命を助けてもらった老マフィアを主と考え、忠誠を尽くそうとしている。ゴースト・ドッグは彼の依頼で殺しを行ったのだが、そのために命をねらわれることになる。

ジム・ジャームッシュ小津安二郎を敬愛しており、大の日本びいきであることはよく知られている。
その彼が、武士道についての本「葉隠」の心を表そうとし映画で、サブタイトルに「サムライの流儀」とある。

そのためか、ジム・ジャームッシュにしては、いつもよりも物語に寄りかかろうとしたところがある。
だから彼の独特のぬるい雰囲気を期待していると、あれ?と思う。
だからといって、彼の映画が普通のアクション映画になるはずもなく、それを期待した人には肩すかしになる。

しかし、さすがにジャームッシュであり、ゴースト・ドッグを演じるフォレスト・ウィテカーが良い。
武士道の解釈はやや誇張されたような部分もあるが、自己に対しての一定の規律を守り、美意識を貫いているところが納得させられる。
盗んだ車では必ず持参したヒップ・ホップのCDをかけたりもする。
サイレンサー付きの拳銃を、まるで日本刀を鞘に戻すような仕草で、ホルダーに納めるところも面白い。

登場する人物たちも、彼の映画らしく、どこかが少しだけ奇妙である。
マフィアたちはTVでアニメばかり見ているし、公園で出会う女の子はランチ・ボックスの中に小難しい本をたくさん入れている。
主人公が友だちだという公園のアイスクリーム売りはフランス語しかしゃべれない。
だから、二人の会話はお互いに何を言っているのか判らないままに行われている。
まるで、あの「コーヒーとシガレッツ」でのずれた会話を極端にしたようなものだ。
ジャームッシュは、会話によるコミュニケーションなんてこんなものだと言いたいのかもしれない。

ジャームッシュはインタビューでゴースト・ドッグを「ドン・キホーテのような」と語ったとのこと。
ドン・キホーテが心酔した騎士道が他人からは滑稽に見えたとしても、彼にとっての守るべき美意識があったわけで、ゴースト・ドッグの愚かに見えるような最後の行為も彼にとっては守るべきものだったのだろう。

日本の武士道の考え方に影響を受けたというフランス映画に、アラン・ドロン主演の「サムライ」があった。
やはり主人公は孤独な殺し屋であった。白いトレンチ・コートを着て無表情に殺しをしていたが、彼も一人の部屋で鳥を飼っていた。

ジャームッシュとしては、ちょっと中途半端な作品である。
しかし、この独特の雰囲気は、やはりなかなかに良いよなあ。