2006年 中国 114分
監督:チャン・イー・モー
出演:チョウ・ユンファ、 コン・リー
中国・後唐時代の王家の愛憎劇。 ★★★★
チャン・イーモー監督がこれまでの「LOVERS」「HERO」でも見せた鮮やかな色彩美とワイヤ・アクションが圧倒的な迫力であった。
冒頭の、豪華な大回廊を練り歩く侍従たちの画面から惹きこまれてしまった。
王(チョウ・ユンファ)が政略結婚をした今の王妃(コン・リー)は、先妻の子である義理の長男と不義をしている。それを知った王は王妃の飲む薬に毒を混ぜている。
実の息子である次男は、母を殺そうとしている王を倒すための謀反を起こす。
常に疎んじられていた三男も王に反旗を翻す。
こうして、華やかさとは裏腹な、というか、華やかさを維持するためのどろどろとした人間関係がこれでもかと繰り広げられる。
物語は、画面中が菊の花で埋められる重陽祭の日に大円団を迎える。
戦いの場面の迫力は圧倒的な人海戦術によるものであろう。
次男の反乱軍に対して王が用意していた対抗戦術はあっと度肝を抜くものだった。
王役のユンファはもう一つしっくりしていなかったが(私の中では暗黒街の住人のイメージが強いので、ユンファが王様?と思ってしまったのです(笑))、コン・リーは圧巻。
愛欲に執着しながらも自らの人生に諦めたような、どこか生きることに退屈しきったような表情が魅力的であった。
(ネタバレ)
謀反が失敗に終わり長男も三男も殺される。
生き残って捕らえられた次男も、母に毒を飲ませることを強要されて自害する。
三人の息子が死んだあとも平然と食卓に着いている王。
傍らには毒により余命が尽きようとしている王妃だけがいる。
こうして王の肉親はすべて死に絶えていく。
映画はここで終わるのだが、王の物語はこれからも続くはずである。
一人で取り残された王は、これからどのような生き方をしていくのだろうかと思ってしまった。
終わったところからはじまる物語もあるはずなのだ。