あきりんの映画生活

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「こころの湯」 (1999年)

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1999年 中国 92分
監督:チャン・ヤン

下町のお風呂屋さんの物語。 ★★★

北京下町の古い銭湯が舞台。
知的障害のある次男アーミンと一緒に暮らすリュウ(チョウ・シュイ)は、経営している銭湯を愛し、そこへやってくる客を大事にしていた。

物語は、家を離れていた長男が久しぶりに二人を案じて帰省してきたところから始まる。
だから、観ている者もその長男と同じ視点で、父親と次男の様子や、銭湯の様子を眺めていくことになる。

この父と次男の二人の関係が実に微笑ましい。父は次男を愛しており、次男は父を無条件に慕っている。
営業を終えたあとには二人で夜の街をジョギングしたりする。
久しぶりに戻った長男が疎外感を感じないかと心配になるほど。
でも、みんな好い人なのだ。

中国の銭湯の様子も興味深い。
映画には男湯しか出てこない。女湯はないのだろうか?
そして銭湯は下町の人々の憩いの場であり、交流の場でもあるようなのだ。
広い休憩室では中国将棋を指したり、それぞれが育てているコオロギを戦わせたりしている。

客の人生模様も描かれる。
喧嘩ばかりしている夫婦がいたり、無謀な商売に手を出して借金取りに追われている人がいたり。
そんな人たちにリューは手助けをしたりしている。
皆に愛されているおやこであり、銭湯なのだ。

途中でアーミンの母親の話が挿入される。
中国の山間の地方では嫁入り前に風呂に入り身を清める風習があるらしいのだが、水がないのだ。
そこで食料と引き替えに入れ物一杯の水と交換してもらい、それを集め続けてやっとお風呂を沸かすのだ。
また、さらに嶮しい山間では一生に一度、湖で身を洗うのが念願だったりするのだ。
お風呂は身体だけではなくて心も洗うところなのだよ、とリューは言う。

しかし、ある状態が避けられなくなり、ある事件が起きて、人々は散っていくことになる。
それを受け入れられないアーミンが切ない。

トロント国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞しています。