2019年 日本 117分
監督:蜷川実花
出演:藤原竜也、 玉城ティナ
極彩色アクション。 ★★★★
平山夢明の同名小説の映画化。
原作は日本冒険小説協会大賞と大藪春彦賞をダブル受賞していて、大変に面白いものだった。
舞台が、殺し屋専門のダイナー、というところからしてぶっ飛んでいる。
これをどう映画化した?
幼い頃に母に捨てられて以来、自分は誰からも必要とされていない人間だと思い込んで生きてきたオオバ カナコ(玉城ティナ)。
メキシコに行きたいという夢を叶えるためにヤバイ仕事に手を出し、組織に捕まる。
そして身売りされたのが、元殺し屋の天才シェフのボンベロ(藤原竜也)が仕切るダイナー。
そこは客の全員が殺し屋で、料理の出し方を間違えただけで殺されてしまうところだった。
監督は極彩色世界を構築する蜷川実花。
そして舞台のダイナーのデザインは、なんと、あの横尾忠則。
(壁面には、おそらくこの映画のために作成したと思われる横尾の大きな作品が掛けられていた)
これはヴィジュアルを期待してしまうぞ。
その期待は十二分に満足させられた。赤色が美しく乱舞する。
物語も舞台も芝居がかっている。
予告編でも流れていた藤原竜也の見得を切った台詞、「俺は~、ここの~王だ~。砂糖の~一粒まで~俺に従う~!」は好かった。
監督の父、蜷川幸夫の舞台で頭角を現してきた藤原だから、元々の演技が芝居がかっている。
そこがかえってお気に入りの理由でもある。
客としてあらわれる殺し屋たちや、勢力争いをしている4人の組織のボスたちも、それぞれに漫画チックで好かった。
この映画にはリアルさは要らない。
ひたすら作り物であるけばけばしさを求めている。
物語はオオバ カナコ(大場かな子=大馬鹿な子)の視点ですすむ。
だから、ボンベロのこれまでの人生などが明らかにされることはない。
しかし次第にカナコと気持ちが通じ合っていくところは、お約束だが、気持ちよく観ることができた。
殺し屋の一人スキンが、母親を思い出すスフレの逸話で、「満たされない希望が生きる目的になっている奴もいるんだ」という台詞は、何か深いものを感じさせてくれた。
終盤、ボンベロがカナコに向かって言う「お前がお前を必要としている」という台詞も好かった。
(原作にそのままあったのかどうかは忘れた 汗)
エンディング、メキシコでダイナーを始めたカナコの元へボンベロが現れるのは、幻だよねえ。
(原作では、たしかダイナーを始めたカナコがいつまでもボンベロがくるのを待っている、という感じだったはず)
なんでも原作は第2部が書かれるとか・・・。