あきりんの映画生活

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「ル・アーヴルの靴みがき」 (2011年)

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2011年 フィンランド 93分
監督:アキ・カウリスマキ
出演;アンドレ・ウィルム、 カティ・オウティネン

脱力ほのぼの人情ドラマ。 ★★★☆

 

北フランスの港町ル・アーヴル
ここで靴みがきをしているマルセルは妻アルレッティとつましいが穏やかな生活をしていた。

貧しい生活なのだが、夫は仕事に誇りを持っているし、妻はそんな夫を大事にしている。
夕食の準備をする間、一杯飲んでいらっしゃいとマルセルに小遣いをアルレッティ。
友人はマルセルに、お前にはすぎた女房だ、と言う。

 

好い人ばかりが静かに暮らしている。
観ている者の気持ちも和らいでいく。そんな雰囲気の映画なのである。
しかし、アルレッティが病に倒れて入院してしまう。
彼女は医者から余命を告げられたのだが、そのことをマルセルには内緒にする。


登場人物は皆、無表情で淡々としている。
たとえば、密航者が隠れていたコンテナを警察が開ける場面でも、警察官も密航者も平然としている。
一大事件が起きているのに、誰も慌てない、騒がない。
そこがカウリスマキ映画の持ち味である。

 

ある日、マルセルはアフリカからの密航者の少年と出会う。
あのコンテナから逃げ出した少年で、警察に追われている。
マルセルは少年をかくまい、母がいるロンドンに行きたいという彼の希望を何とかしてかなえてやろうとする。

 

不良ロック歌手のコンサートを開いて、その売り上げを少年の密航費にしようとする。
みんながマルセルの手助けをしてくれる。

しかし、アルレッティは入院が必要な状態にまで病状が進んでしまう。

 

映画ではあからさまな感情表現はないのに、感情が画面全体から伝わってくる。
不思議な静けさをたたえた作風である。
カウリスマキ監督が小津安二郎を敬愛していたことは有名だが、その小津は笠智衆に、台詞に感情をこめるな、と指導したとか。

 

(以下、ネタバレ)

 

最後、少年を逃がしてやったマルセルは1日遅れてアルレッティが入院した病院に行く。
奥さんはもう亡くなっているのだろうな、と思いながら観ていた。
無人の病室のベッドの上には届けた洋服のつつみがそのまま置いてあるし。
ところが・・・。

 

そこでこれは主人公が夢を見ているという設定かと思ったら、カウリスマキ監督はそんな常識的なことをする人ではなかった(汗)。
自分が持っていきたい物語があれば、ファンタジーめこうが何だろうがやってしまうのである。
これには感嘆。さすが。

 

好い人たちが好いことを世間の片隅でおこなっている。
それにしても、家に戻ってきた奥さんが、満開ね、と言って見上げた桜のショボかったこと。
あれ、狙ったユーモア? 傑作!